2315脳神経外科 二刀流のススメ
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も一定のレベルに達したら,安全度の高い治療から,指導医の監督下に経験できるようにしている.また,その後は執刀医として治療経験を増やすことが重要である.このようなトレーニングを積んでもらうことで,ほぼすべての人を高レベルの術者に育成できると考えている.6二刀流になってよかったこと 血管内治療の一刀流から二刀流になってよかったことは,①両方の治療ができることでほぼすべての血管障害を治療できる,②使い分けができるので無理をしなくなり全体の治療成績が上がる,③治療困難例にハイブリッド手術ができる,ということである.また,血管内治療で起こした合併症を,自身の外科手術によってリカバリーした経験もある.最近ではさまざまな経歴の若手と脳血管障害の治療に明け暮れる毎日であるが,やはり「二刀流に大きな利あり」と考えている.7二刀流の経験と治療選択 二刀流の経験が増えると治療選択はどうなるのだろうか?自身は治療手段を徐々に意識しなくなり,「この患者さんにどちらの方法が安全か」だけを考えるようになった.それは教科書レベルの判断のこともあるが,「前脈絡叢動脈が瘤から分岐している大型瘤に,MEPを併用してSuc-tion decompression下でクリッピングをしたほうがよいのか,この動脈瘤にstent strutを意図的に逸脱させてコイルで塞栓するのと,どちらが安全か」といった自身の技術レベルに関わる高度な判断まである.そのような判断ができるようになると治療成績は極めて良好となり,リスクの低い症例では指導に回る余裕が生まれてくる.8二刀流の今後 今後も低侵襲化の流れに乗って血管内治療はさらに増加すると予想されるが,わが国はクリッピングの技術レベルが高く,諸外国と比べても治療成績がよいとされている.これは誇るべきことであるし,今後も維持すべきものである.したがって,安全にクリップできる中大脳動脈瘤に複雑なステント併用コイル塞栓をして,生涯にわたって抗血小板薬を内服し続けるリスクを患者に負わせることについて私たちは慎重でなくてはならないと思う.しかし,デバイスの改良・開発によって血管内治療はさらに進化することが予想されるため,その時点でその患者さんにどの方法がベストかを真摯に考えて実践することこそが,二刀流の私たちに必要な資質であろう.9二刀流の欠点 さて,ここまで二刀流のよいところばかり書いたが,最後に欠点を述べておきたい.それはより多くの勉強と経験が必要となることである.二刀流を目指しても勉強不足,経験不足のために,結局どちらの治療も中途半端になってしまうというリスクがある.だから,「自分は二刀流で行く」と決めたら,とにかく積極的に検査や治療,そして学会に参加し,人の二倍勉強するつもりで学び続けることが必要である.頑張る人にはきっとチャンスが巡ってくる.みなさんが真の二刀流脳外科医となり,将来大きく活躍することを祈っている.8●

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