2315脳神経外科 二刀流のススメ
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1経過観察 国際未破裂脳動脈瘤研究(ISUIA)では,巨大海綿静脈洞部内頚動脈瘤の破裂率は5年間で6.4%とそれほど高くない.しかし右外転神経障害を呈し,症候性となっているため,その治療希望があれば下記のいずれかを選ぶこととなる.2外科手術(ハイフローバイパス) 頚部内頚動脈閉塞とハイフローバイパスにて治療した場合,根治率が高いとされている一方で,バイパスからの逆行性血流による瘤増大の可能性が残ることが問題である.また,本治療は比較的侵襲が大きく,頭部,頚部,前腕または下腿に創ができてしまう欠点を有する.3血管内手術(フローダイバーター:FD) FDの特徴は瘤内へコイルなどの異物を挿入せずに瘤を縮小・治癒できる点で従来のコイル塞栓よりも優れている.周囲解剖学的構造物へのmass e ect軽減効果も期待できる.FDによる未破裂大型~巨大内頚動脈瘤の治療成績を報告したPipeline for Uncoilable or Failed Aneurysm(PUFS)では,治療180日後,1年後,3年後,5年後の動脈瘤完全閉塞率は74%,87%,93%,95%とされ,経時的に上昇することが報告されている1).一方で,表1に示すような事項に該当する場合には,FD留置は困難となる.患者背景・近位血管の屈曲などアクセスルートに問題あり・出血性疾患合併のため,抗血小板療法禁忌形態学特徴・巨大動脈瘤で,動脈自体が拡張している・瘤が母血管の大弯側にあり,極めて大きい表1 FD留置困難となる患者背景および動脈瘤の形態学特徴4血管内手術(母動脈閉塞:parent artery occlusion) Balloon test occlusionにおいて患者が虚血症状を呈さず,血流が低下しないかごく軽度の低下を示すなど,側副血行が良好であればコイルによる母動脈閉塞が選択肢となりうる.ただし本症例では右内頚動脈バルーン閉塞にて,広範な血流低下が生じるため(図2),単純な母動脈閉塞は虚血性合併症のリスクが高いと判断した.治療選択肢52●

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