2318プライマリ・ケアのための新規抗てんかん薬マスターブック 改訂第2版
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ててんんかかんんのの診診断断かからら治治療療ののアアウウトトラライインン今井克美11-1発病からてんかん診断てんかんの定義以前は世界保健機関(WHO)の概念的定義が一般的であったが,最近は国際抗てんかん連盟(ILAE)が2014年に発表した新しい実用的定義が用いられることが多い1)(表1).神経疾患を有していたり,発作症状と関連し得る脳波異常や神経放射線学的検査異常を有する場合や,てんかん症候群に合致する場合には,発作が1回のみでもてんかんであり得るとするのが新しい定義の特徴である.てんかん発作様の症状を主訴に患者が病院を受診した際の診断から治療への大まかな流れは図1のとおりである.発作症状の確認上記の定義にも述べたように,てんかんの診断にはてんかん発作が少なくとも1回はあることが必要である.発作の内容は個々の患者によって違い,病院受診時にはすでに発作は止まっていることが多いので,本人,家族,その他の目撃情報の収集に努める.初回発作では周囲にいる人は慌てていて詳細を覚えていないことも多いが,発作症状を詳しく聴取するなかで次の発作で観察すべきポイントを伝えておくとよい(表2).携帯電話やデジタルカメラによる動画記録を勧めておくと参考になる.発作症状を詳しく聴取することで,てんかん以外の疾患の可能性を除外できる場合がある.発作症状からてんかん発作型やてんかん焦点部位を推測できる場合があり,脳波や神経放射線学的検査所見と一致する場合にはてんかんの診断はより確かになる.発作中の症状だけでなく,発作直前に表情が変化したり,体の一部を押さえたりするなどの行動がみられたり,発作終了後に体の一部にしばらく力が入らない様子や,言葉を話せるようになるまで時間表1てんかんの定義1.概念的定義:世界保健機関(WHO)1973年種々の成因によってもたらされる慢性の脳疾患であって,大脳ニューロンの過剰な電気発射から由来する反復性の発作(てんかん発作)を主徴とし,それにさまざまな臨床症状(注:知的障害・運動障害など)および検査所見(注:脳波異常,MRI異常)を伴い得る2.実用的定義:国際抗てんかん連盟(ILAE)2014年1)(1)24時間以上の間隔で2回以上の非誘発性(または反射性)発作が生じる(2)1回の非誘発性(または反射性)発作が生じ,その後10年間の発作再発率が2回の非誘発性発作後の一般的な再発リスクと同程度であると考えられる(=再発リスクを有する:筆者加筆)(3)てんかん症候群と診断されている(2)の再発リスクについては,ILAE文献1)には「少なくとも60%以上」と記載されているが,リスクの評価法は記載がない第1章てんかん診療の基礎知識2

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