2323脳血管内治療の進歩-ブラッシュアップセミナー2017
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178はじめに1 血栓回収療法において再開通を得ることが比較的容易になってきた今,良好な治療成績を達成するために必要なことは,発症から再開通までの時間を少しでも短くすることである.本稿では,患者が来院してから再開通までの時間をいかに短縮するかについて,当施設での取り組みを踏まえながら言及する.ガイドライン2 血栓回収療法の有効性を証明した5つのランダム化比較試験(RCT)のうち,2つの試験では時間に対する制約が設けられている.ESCAPE試験1)ではCTから穿刺までの時間で60分,CTから最初の再開通までの時間で90分を目標値としており,SWIFT PRIME試験2)ではinclusion criteriaとして発症から穿刺までは6時間以内,画像評価から穿刺までは90分以内と定義している.そのため2015年に改訂された米国心臓協会(AHA)/米国脳卒中協会(ASA)のガイドラインでは,治療が発症から6時間以内に開始されることがClass I,Grade A recommendationであり,施設や地域の体制作りの必要性も指摘されている.またRCTのメタ解析でも再開通までの時間の重要性は報告されており,発症から穿刺までの時間が3,6,8時間以内での血栓回収療法のオッズ比はそれぞれ2.79,1.98,1.57であり,時間は短ければ短いほどよいことは明らかである.血栓回収療法が有効である発症から穿刺までの時間は7時間18分であり,発症から再開通までの時間が9分,来院から再開通までの時間が4分遅れると100人に1人のmRSが低下すると解析されている4). 次に示す表1は,Society of Neurointerven-神戸市立医療センター中央市民病院脳神経外科 今村博敏,坂井信幸Door to Reperfusion2◉ 良好な治療成績を達成するために必要なことは,発症から再開通までの時間を少しでも短くすることである.◉ 発症から再開通までの時間が9分,来院から再開通までの時間が4分遅れると100人に1人のmRSが低下すると解析されている.◉ 来院からCT,来院からアルテプラーゼ静注療法(IV-rtPA)開始,来院から穿刺,来院から再開通までの目標時間は,それぞれ15分,30分,60分,90分である.◉ 症例ごとに,さらなる時間短縮が可能かどうかを医師だけでなく関係するスタッフ間で振り返ることが時間短縮には必須である.A.最良の結果を得るためにどう取り組むか?III AISの血管内治療はここまで進んだssential PointE

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