24第Ⅱ部 アレルゲンコンポーネントと食物アレルギー関連疾患近年,食物アレルギー領域を中心にアレルゲンコンポーネント(コンポーネント)特異的IgE検査の臨床意義が明らかになってきた.現行の粗抗原に対する特異的IgE検査に加えてコンポーネント特異的IgE検査を実施することで,より精度の高い診断が可能となる.すなわち,粗抗原中の含有量が少ないコンポーネントの測定は臨床的感度の向上,当該アレルゲンに特異的なコンポーネントでは臨床的特異度の向上が期待できる.また,誘発症状の重篤度に関係するコンポーネントも明らかになり,誘発症状の重症度を推定することが可能となる1).特に,果実類,穀類,豆類,ナッツ類によるアレルギーの検討がなされている.植物のプロフィリン,Bet v 1スーパーファミリー,クーピンスーパーファミリーおよびプロラミンスーパーファミリーに属するコンポーネントで,これらアレルギーの原因の約60%を占めると報告されている2).表に世界保健機関アレルゲン命名委員会のホームページを参考に作成したおもな植物由来食物のアレルゲンコンポーネント分類を示す.単離または遺伝子組換えにより作製されたコンポーネントの分析により,その物理化学的性質およびほかのコンポーネントとの交差性,誘発症状との関連が明らかになり,コンポーネント特異的IgE検査の臨床応用が広がってきた.以下に植物に由来する食物アレルゲンコンポーネントを例に,これら特異的IgE検査の有用性を概説する.臨床的感度の上昇生体防御蛋白質-10(PR-10)は,カバノキ科の花粉-食物アレルギー症候群(pollen-food allergy syndrome:PFAS)の責任抗原となるが,果実,種子の粗抗原中の含有量が低く,果実などの粗抗原特異的IgE検査が陰性になることがある.そのため,新鮮な果実などによるプリック-プリックテストが有用といわれているが,コンポーネント特異的IgE検査では各々のPR-10(Gly m 4,Mal d 1,Pru p 1,Act d 8など)特異的IgE検査が陽性となり有用となる.また,成人の小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(wheat-dependent exercise-induced anaphylaxis:WDEIA)の診断において,小麦粗抗原またはグルテン特異的IgE検査が陰性となる場合が少なくないが,Tri a 19(ω-5グリアジン)特異的IgEは本症に対する臨床感度が80%と高い3).臨床的特異度の上昇穀類,豆類,ナッツ類の粗抗原特異的IgE検査は,臨床的感度は90%以上と良好であるが,特異度は50%程度と低く,この傾向は皮膚試験でも同様である.当該アレルゲンに特異性が高く(ほかのアレルゲン中のコンポーネントとの交差性が低い),症状誘発との関係が明らかなものの特異的IgE検査が有用になる.このようなコンポーネント特異的IgE検査とし吉原重美 獨協医科大学医学部小児科学Ⅱアレルゲンコンポーネントと食物アレルギー関連疾患概説1アレルゲンコンポーネントの測定意義
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