2339小児臨床栄養学 改訂第2版
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386第10章 栄養食事指導 栄養食事療法は,栄養状態の改善により疾病の治療を支持するものであり,一部の先天代謝異常症では治療の第一選択となる.臨床栄養管理においては,さまざまな基礎疾患をもつ患児が不適切な栄養摂取によって生じる問題を予防・是正する必要がある.管理栄養士は,栄養食事療法を必要とする患児と家族が日常の食生活のなかで適切に実施できるように栄養プランを立てて,栄養食事指導を行う.栄養プランは個々に異なるが,小児の栄養管理におけるアウトカムは,患児それぞれの順調な発育と,患児と家族がともに食生活を楽しめるようにQOLを向上させることである. 近年,新たな栄養管理手法として提唱されている栄養ケアプロセス(nutrition care process;NCP)1)に沿って,小児の栄養食事指導の手順を概説する.1栄養アセスメント(nutritionassess-ment)(第4章参照)① 成長曲線と肥満度曲線を用いて身長,体重,肥満度の軌道を確認する.② 血液検査や尿検査の結果から病態や栄養状態を反映する項目の経過を確認する.③ 毛髪や皮膚,爪の状態,活気,機嫌など身体状況を観察する.④ 生活リズム,食事内容,共食者,介護者を含め食生活全般の聞き取りを行い,栄養摂取状況,摂食嚥下機能発達レベル,食事状況を把握する.聞き取りポイントの例を表1,2に示す. 以上から,栄養状態をアセスメントし問題点を抽出する.2栄養診断(nutritiondiagnosis) アセスメントした結果は,「栄養診断」として,P(problem or nutrition diagnosis label,問題や栄養診断の表示),E(etiology,原因や要因),S(sign/symp-toms,栄養診断を決定すべき栄養アセスメント上のデータ)により「症状/徴候(S)の根拠に基づき,要因(E)が原因となった,栄養診断名(P)」と短文で簡潔に記載すると誰からも理解しやすい.3栄養介入(nutritionintervention)1)栄養プラン① 栄養状態を改善し順調な成長を維持するための目標摂取栄養量を検討する.② 目標摂取栄養量から患児が摂取可能で家族が対応可能な食品構成を検討する.③ 目標の食事を摂取し食生活全般における問題点を改善するための具体的かつ実践可能な方法を患児・家族と一緒に検討する.2)栄養教育(詳細な手法については後述する) 栄養プランを実施できるように患児・家族に栄養教育を繰り返す.4栄養モニタリングと評価(nutritionmonitoringandevaluation) 問題が改善するまで継続して必要なモニタリングを行い,結果に対してだけでなく,栄養プランを実施するうえで問題がなかったかについても評価する.成長や環境の変化に伴って栄養状態および食生活の問題点は変化するため,栄養アセスメントを繰り返し,必要に応じて栄養プランを変更する.a栄養食事指導の手順第10章 栄養食事指導A小児の栄養食事指導nutrition counseling for children ●家族が患児の疾患・障害を受容する過程を理解する. ●患児の食生活を変容させるには家族の行動変容が必須であり,そのためのキーパーソンは誰であるかを把握してアプローチする. ●学校・通所施設と連携し,給食も含めて栄養食事療法を実施できるように患児・家族をサポートする.ポイント

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