128〔解説〕◆◆歴史的背景 読書てんかん(reading epilepsy;RE)は1956年,Bickfordらによって初めて報告された.彼らは,読書時のみ発作が出現する原発性REと,読書時以外にも発作が出現する続発性REに分類した.ILAE 1989年てんかん分類では原発性REのみが採用されたが,その後両者はより一様なものと扱われてきた.しかし現在も原発性REは使用されている.なお2010年のILAE 2010年てんかん分類で,REは反射てんかんに分類されている.◆◆発作症状 REは典型例と非典型例に分類される.典型例では口腔顔面あるいは顎にミオクローヌスが出現し,一定量の読書後には上肢そして体全体に拡散する.自覚的には顎に硬直感,カチッとする感覚,ピンと張った感じ,そして頭部や身体に電気ショックのような感覚を感じる.まばたきや眼球運動などの眼症状を訴えるものもいる.大抵の場合意識消失はないが,意識減損し健忘が生じ,どこを読んでいたのかわからなくなるものもいる.そのまま読書を続けると発作は全般化する.非典型例は最近の概念で,幻視・反復視・その他の視覚症状に引き続き,顎や半身あるいは全般性の運動発作が出現する.非典型例のすべての患者では視覚症状に随伴して失読症を自覚する.REでは読書とてんかん活動の双方に関わる複雑な皮質のネットワークが存在するとされる.◆◆画像検査 典型例・非典型例,ともにCTやMRIは通常正常.発作時においては,典型例ではSPECT(single photon emission computed tomography)で左側頭部あるいは両側前頭部に変化がみられ,fMRI(functional MRI)で左運動野や運動前野に変化がみられたとする報告がある.非典型例では,SPECTで左後頭・頭頂部,左側頭部と左下部前頭部に変化がみられたとする報告がある.◆◆脳波 典型例では発作間欠時は通常正常,発作時は短い鋭波あるいは棘徐波複合などが左側や優位半球にみられることが多い.非典型例では,発作間欠時に左後方部の棘波や両側前頭部に異常所見が,発作時にはほぼ連続的に左側後頭・側頭部の放電が,失読症出現と同時期に出現するなどがみられる.◆◆治療 発作は非常に特殊で稀であり,しばしば非てんかんと誤診される.正確な診断をつけることから治療が始まる.典型例ではVPA,CZP,LEVが,非典型例ではCBZが有効である.年齢を重ねることで軽快し,将来的には抗てんかん薬中止の可能性がある.焦点性発作が起こり始めても,読書を中止すれば全般化が防げるため,抗てんかん剤を服用しない患者がかなりいるが,発作を防ぐため読書を避けることは日常生活の支障となる.文 献 1) Miller S, et al. Reading epilepsy. Pract Neurol 2010;10:278‒281. 2) Yacubian E. M., et al. Orofacial reflex myocloni. Definition, relation to epilepsy syndromes, nosological and prognosis significance. A focused review. Seizure 2015;30:1‒5. 3) Wolf P. Reading epilepsy. In:Wolf P, ed. Epileptic seizures and syndrome. London:John Libbey, 1994;67‒73.(北原明彦)●反射てんかん(reflex epilepsy)◆◆概念 反射てんかん(reflex epilepsy)とは特異的な刺激またはイベントにより,再現性をもって発作が誘発されるものをいうが,実際には反射発作のみでなく,それ以外のてんかん発作(非誘発性)をもつことが多い.〔解説〕 てんかん患者の約5~6%にみられ,発作を誘発する刺激には単純な感覚刺激(光,音,接触など)から読書(reading)や思考(thinking)などの複雑な刺激行動まで幅広く,発作発現の機序や病態は多様である1).また反射てんかん発作は常に特定刺激と発作との関係が明瞭で,On/Off効果がはっきりしているため,一定の状況下で発作が生じやすくなる状況関連てんかん(アルコール摂取やストレスなど)や熱性けいれんなどの機会性発作とは区別している.◆◆発作誘発刺激の種類と反射てんかんのタイプ2)① 視覚刺激:特発性光感受性後頭葉てんかん(強直間代発作をもち,最も多い)② 思索思考:他の視覚関連てんかん(TV,ビデオ,TVゲームなど)③聴覚刺激:聴源性てんかん,音楽てんかん④触覚刺激:驚愕てんかん,入浴てんかん(温水)Reflex epilepsy/Startle epilepsy反射てんかん/驚愕てんかんReading
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