2343わかりやすい予防接種 改訂第6版
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535 ワクチンの標準的な接種年齢 B型肝炎ワクチン B型肝炎ワクチンは2016(平成28)年10月に,同年4月以降に出生した児を対象に定期接種化されました.“接種が定められている年齢”は1歳未満で,“標準的な接種年齢”は生後2か月以降9か月未満です.定期接種化にあたり,従来行われてきていた母子垂直感染予防目的のB型肝炎ワクチン接種は定期接種には含められず,別枠扱い(従来通りの健康保険適用)となりました.B型肝炎ワクチンはワクチンのなかでは珍しく生直後から接種開始が可能なワクチンですが,母子垂直感染予防目的の接種を除けば,生後2か月からの接種開始でまったく問題ないと思います. 定期接種の場合は,生後2か月以降開始されるHibワクチン,小児用肺炎球菌ワクチン,ロタウイルスワクチン(定期外)の各1回目接種と同時に1回目接種を開始するのがよいでしょう.生後2か月からB型肝炎ワクチン接種を開始することの最大の利点は,父親がB型肝炎ウイルスキャリアの場合の父子水平感染予防に役立つことがあげられます.父親がB型肝炎ウイルスキャリアの場合,10例に1例くらいの割合で父子感染を発症することが知られています.これまでB型肝炎ウイルスの父子水平感染予防に関しては何の対策も立てられてきませんでした.母親は妊婦健診のなかでB型肝炎の検査を必ず受けますが,父親の場合は一度も検査を受けたことのない人がおそらくたくさんいると思われます. 母子垂直感染予防の場合は2014(平成26)年4月より,標準的な接種法としてWHO推奨のいわゆる国際方式が採られ,生直後(12時間以内)にB型肝炎ワクチン接種をHBIG投与とともに開始するようになりました(以前の母子感染予防のB型肝炎ワクチン接種は生後2か月から開始されていました).ワクチンの効果としては従来の方法も国際方式もほぼ同等です.違うのはワクチン接種開始のタイミングです.現在の日本ではいわゆる里帰り分娩が広く行われています.里帰り分娩の場合,従来の方法では出産と1か月健診までは母親の実家近くの医療機関で行われ,2か月以降のB型肝炎ワクチン接種は母親の居住地の医療機関で開始されることが多くなります.実家と居住地が遠く離れていることも普通で,2つの地域のA

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