2360産婦人科研修ノート 改訂第3版
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402上腹部・心窩部痛. ただし,それぞれの症状を呈する他の重大疾患の鑑別が大切=頭痛:頭卒中,眼症状:浮腫性網膜剝離,上腹部・心窩部痛:HELLP症候群,肝破裂,肝被膜下血腫.その他,不眠や頭重感も中枢神経系異常にかかわる症状として重要②呼吸困難:肺水腫,胸水貯留③ 悪心嘔吐:HELLP症候群・急性妊娠性脂肪肝④乏尿:腎機能不全⑤ 子宮の圧痛,突然の下腹部痛,性器出血:常位胎盤早期剝離⑥ 胎動感減少:胎児機能不全や子宮内胎児死亡⑦ 紫斑・粘膜出血症状:HELLP症候群,血小板減少⑧下肢痛,下肢の腫脹:深部静脈血栓症c 必要な臨床検査とその意義(二次性高血圧鑑別のための検査は除く)………1) 血液凝固学的検査・ 血液濃縮:妊娠高血圧腎症妊婦では循環血液量減少,血液濃縮となりやすい.その場合は,もともと貧血があっても見かけの血液学的所見は正常のことがある.・ 血小板数低下,溶血(破砕赤血球像):HELLP症候群ではなくても,それぞれ単独でHDP重症とみなしうる・ ATIII低下:DICの徴候が明確ではなくてもHDP重症例でしばしば認められる.2) 生化学検査・ 血清尿酸値:妊娠高血圧腎症では軽症であっても正常妊婦に比べると高く(4.5mg/dL以上),病態の重症化に伴いさらに増加する.・ 血清クレアチニン値:正常妊婦は腎糸球体流量増加のため,正常非妊婦より低い.0.8mg/dL以上であれば腎機能低下とみなす.・ 血清LDH・AST・ALT・ビリルビン値の上昇:HELLP症候群・急性妊娠性脂肪肝だけではなく,HDPの病態が重症であることを示す根拠である.3) 胎児胎盤機能検査・ 発育程度のモニター:定期的児推定体重計測.・ 胎児生理機能の評価:胎児心拍モニタリング, biophysical profile scoring(BPS),超音波パルスドプラ法胎児血管波形分析など.4) その他の検査・合併症の検索 a. 頭蓋内出血や腹腔内臓器の血腫・破裂表1  HELLP症候群の診断1) Sibai の基準① 溶血:血清間接ビリルビン値1.2mg/dL 以上,血清LDH 値600U/L 以上,病的赤血球出現② 肝酵素上昇:血清AST(GOT)値70U/L 以上,血清LDH 値600U/L 以上③血小板数減少:血小板数10万/μL以下2) 下記の場合はSibai の基準を満たさなくても注意が必要① 溶血:血清間接ビリルビン値,血清LDH 値が各施設の正常域を越えて高値の場合② 肝酵素上昇:血清AST,GOT値が各施設の正常域を超えて高値の場合③ 血小板数減少:血小板数15万/μL以下の場合表2  HELLP症候群の鑑別診断産科的合併症肝被膜下血腫,肝破裂,急性妊娠脂肪肝他科合併症・主に症状からの鑑別疾患:急性ウィルス性肝炎,急性胆囊炎,急性膵炎,胃・十二指腸潰瘍,急性虫垂炎 尿管結石,腎盂腎炎,狭心症・心筋梗塞・主に検査異常成績からの鑑別疾患:妊娠性血小板減少症,血栓性血小板減少性紫斑病,特発性血小板減少性紫斑病溶血性尿毒症症候群(HUS),SLE,自己免疫性溶血性貧血薬剤性肝障害,薬剤性溶血性貧血HUS:hemolytic uremic syndrome,SLE:systemic lupus erythematosus

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