2360産婦人科研修ノート 改訂第3版
6/8

404によりブロックされるため筋弛緩薬作用が増強する(グルコン酸カルシウムにより回復する).f 分娩について…………………………・妊娠の終結① 重症度や妊娠週数にかかわらず母体臓器障害の進行や胎児機能不全のあるとき②重症例で妊娠34週を過ぎた場合③正期産時期の軽症例で頸管が熟化 などの条件があれば妊娠終結とする.・ 経腟分娩か帝王切開かの選択は,妊娠週数,頚管熟化度,母児に対する処置の緊急性を考慮して決定する.・ 経腟分娩にあたっては,硫酸マグネシウムによる子癇予防や降圧剤持続静注などによる血圧調節,子宮口全開後の怒責による血圧上昇を最小限とするため吸引分娩を行う,などの点を考慮する.・ 硬膜外麻酔を併用することで安定した血圧調節が可能となり経腟分娩が安全に管理できることが期待できる2).g 産褥期の管理について………………・ 分娩後も引き続き血圧・尿量・意識レベルの連続監視を行い,産褥子癇,HELLP症候群,腎不全,DICなどの発生を警戒する.・ もともと血液濃縮があるため,正常妊婦に比べるとかなり少ないレベルの分娩時出血量でも輸血を要するほどの循環血液量減少をきたすことがある.・ 血小板数低下症例では腟・会陰部(経腟分娩後)や子宮切開創(帝切後)での血腫形成に注意.・ 分娩後1~3日の間に血管外間質液が血管内に還流するため,輸液量過多は肺水腫をきたしやすい.適宜利尿薬を投与して十分な尿量を確保することが,血圧コントロール上有用なことが多い.・ 通常は分娩後72時間以降に全身状態は速やかに改善するが,その後も高血圧が継続するようであれば,降圧薬を使用しながら産後1~3カ月間観察を続ける.産褥12週でなお高血圧が持続する場合は偶発合併症の存在を疑い,専門医をコンサルトする.蛋白尿についても同様.表3  HDP妊婦に使用する降圧薬:用量,用法と特徴1.ニフェジピン持続性製剤(徐放錠・アダラートCRなど):1回10~40mg,1日1回服用後およそ60分で効果出現がなければ通常製剤10mgの追加を考える.2.ラベタロール:1回50~300mg,1日3回添付文書上は450mg/日が上限となっているが,症状による増減が認められており,欧米では最大1,200mg/日までの使用が推奨されている3.メチルドパ:1回250~500mg,1日3回効果発現まで24時間必要.腎機能障害妊婦の軽症高血圧に使用しやすい.肝障害患者では避ける4.ニカルジピン静注用:妊婦に対して使用する場合は,添付文書通りの使用ではしばしば過度の降圧をきたす.原液を0.5mL/時より開始し,30分ごとに血圧を評価して0.5mLずつ増量して目標降圧レベルを得るという方法が安全.表4  硫酸マグネシウムの使用法1.硫酸マグネシウム4g(マグネゾールとして2アンプル40mL,マグセントとして40mL)を10~15分かけて緩徐に静注2. 1に引き続き,1~2g/時の速度で持続的に静注3.マグネシウムの血中濃度として4~7mEq/L(4.8~8.4mg/dL)を維持する.4.マグネシウム中毒が疑われる場合は拮抗薬グルコン酸カルシウム0.85g(カルチコール注射液8.5%10mL,1アンプル)を緩徐に静注する.

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る