2361腎臓内科レジデントマニュアル 改訂第8版
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5222 高齢者の腎機能の低下速度30高齢CKD患者への対応 腎臓は加齢とともに機能が低下する.70歳以上の高齢者の約30%,80歳以上の約50%がeGFR 60 mL⊘分⊘1.73 m2未満の慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)患者である. 高齢者にCKDが多く認められる原因は細小動脈の動脈硬化による腎硬化症や腎動脈狭窄症による虚血性腎症の増加による.しかし,動脈硬化がある高齢者のすべてがCKD患者ではなく,腎機能が低下しない患者もおり,その個人差は大きい.また,余命が限られる場合や合併症によるフレイル(虚弱性)を有する高齢者も多い. 高齢者の診療には標準的な治療を適応するのではなく,この個人差を見極めるアートが必要である. ■ヒトは加齢とともに,一般的には腎機能が低下する.この原因は腎皮質の萎縮であり,輸入細動脈の硝子化による細小動脈硬化である. ■高齢者(65歳以上)においてもCKDの診断基準は同じである.この根拠は,メタ解析の結果,高齢CKD患者に発症する腎イベント,心血管イベントの相対リスクは青壮年のCKD患者と同じであるからである.加齢による(生理的な)GFR低下も死亡率の増加や心血管疾患リスクの増加に関連する. ■一般に40歳以上70歳未満ではGFRが50 mL⊘分⊘1.73 m2未満になると腎機能低下速度は約2倍速くなる.70歳以上ではGFRが40 mL⊘分⊘1.73 m2未満になると腎機能低下速度が2倍速くなる. ■高齢者を個別にみると個人差が大きくなる.年齢とともに急速に腎機能が低下する患者,腎機能がゆるやかに低高齢者のCKDの診断:高齢者の腎機能低下は生理的か?1高齢者の腎機能の低下速度2高齢CKD患者への対応30

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