2369シェーグレン症候群の診断と治療マニュアル 改訂第3版
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2254 これからの治療の展望 対応と治療5章1生物学的製剤1)インフリキシマブ(レミケード®)インフリキシマブは,マウスのFab領域とヒトIgG1のFc領域を合成したキメラ型抗tumor necrosis factor(TNF)-α抗体であり(図1),日本では,関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA),Crohn病,Beçhet病に伴う難治性ぶどう膜炎に承認されている生物学的製剤である.2002年にSteinfeldらが,10例の原発性SSを対象として1年間のパイロット研究を行い,有効性をArthritis Rheumに報告した1).しかし,2004年にMarietteらが,偽薬を対象として二重盲検試験を施行したが,有効性を認めることができなかった2).一方,2006年にMartinらは,インフリキシマブ投与18症例とシクロスポリンAあるいはメトトレキサート使用20症例と比較検討した結果,唾液量の増加,唾液腺へのradioisotope(RI)の取り込みが改善したことを報告している.今後,対象を増やした臨床治験の結果が待たれる.2)エタネルセプト(エンブレル®)エタネルセプトは,TNF受容体p75の細胞外ドメインとIgG1Fc領域を融合して作製した可溶性TNF受容体であり(図2),日本ではRAに承認されている.インフリキシマブがTNF-αのみをブロックするのに対して,エタネルセプトはTNF-αとTNF-βの両者の機能を抑制する.2004年Zandbeltらは,15例の原発性SS患者を対象としてパイロット研究を施行したが,有効性は認められなかった3).また2004年にSankarらにより,14症例に対する偽薬を対照とした二重盲検試験が施行された4).これは,エタネルセプトを週2回皮下注射して12週後に評価する試験であったが,有効性を明らかにすることはできなかった.彼らは,28例まで症例数を増加して検討したが,血中のinterferon(IFN)-γとinterleukin(IL)-6の低下以外は効果を認めることができなH鎖FabFcTNF-αとの結合部可変領域(マウス由来)25%L鎖定常領域(ヒトIgG1)75%図1 インフリキシマブの構造SSSSSSSSSSSSSS免疫グロブリンIgG1Fc領域TNF受容体p75の細胞外ドメイン図2 エタネルセプトの構造▶Sjögren 症候群(SS)の将来的治療戦略は,発症機序に関わるサイトカイン(TNF-αなど),免疫細胞(B細胞やT細胞),免疫分子を標的とした生物学的製剤を中心として展開されている.▶欧米における臨床治験により,CD20に対するキメラ型抗体であるリツキシマブやCTLA-4 IgのアバタセプトがSSの自他覚症状,腺外合併症などに有効であると報告されていることは注目すべきである.▶TNF-αに対するキメラ型抗体であるインフリキシマブや可溶性TNF受容体エタネルセプトにおいては,明確な有効性は証明されていない.▶根治的治療戦略として,感染症という副作用を防ぐべく,抗原特異的治療法の基盤研究が進行中である.本項では近未来の治療を紹介する.Essential Points!4これからの治療の展望

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