2370緩和ケア評価ツールSTAS 改訂第2版
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 ここまで述べてきたことを頭におきながら,いよいよSTASの実践的活用のために理解を深めることにいたしましょう。 緩和ケアにおいて全人的ケアの考え方は周知されていますが,実践するための具体的な道標は示されていません。また緩和ケアの教育の中でも,同様です。医学教育の中では病気の原因,治療のためにほとんどの時間が割かれており,トータルペイン・全人的ケアについては総論の域を出ていないのが現実です。また看護教育の中では,様々な理論の活用が紹介されていますが,残念ながら学んだ理論を実践の場で活用している看護師は少なく,日々の顕在化した問題の対応に追われているのが現実ではないでしょうか。これは理論から実践へのアプローチの方法が見出せないからです18)。 筆者らは,トータルペイン・全人的ケアを実践するためのツールであるSTASの活用を積み重ねる中で,その時の問題をその場で患者と共有し解決していけることを実感してきました。 STASは患者の抱えている問題・苦悩を全人的に評価できるように設計されており,STASを適切に活用することで,患者の状況を評価し,解決するためのケアの方針を明確にできます。 本章では,STASの活用について以下の順に沿って,解説していきます。1.スコアリング(ケアの評価)の根拠を明確にする2.スコアリングの根拠は,患者が語った言葉(ナラティブ)に基づく3.生活に支障をきたしているかどうかの視点でスコアリングする4.記録はSOAP19)形式を採用し,STASと連動させる5.スコアリングは,チームカンファレンスでの話し合いをもとに行う1 スコアリング(ケアの評価)の根拠を明確にする ケアの評価を数字で表現(スコアリング)しますが,この時に最も重要なことは,スコアリングの根拠を“コメント”として記載することです。 具体例をあげてみていきましょう。1)STAS1(痛みのコントロール)をスコア<1>としたときのコメント例  たとえば,STAS1の痛みをスコア<1>とスコアリングし,コメント欄に“背中の痛みはオプソ(モルヒネシロップ)を服用して楽になりました”と患者が話されていた,と記載しておくと,痛みはあるけど処方されている薬の効果がありレスキューがうまく使えていることがわかります。医療者以外のケアスタッフにも,背中の痛みがあること,オプソ(モルヒネシロップ)が処方されていること,痛い時に服用すれば楽になる,という患者の状況が理解できます。* スコア<1> 時折の,または断続的な単一の痛みで,患者が今以上の治療を必要としない痛みで564章 STASの実践と活用

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