脂質異常症の 検査・管理方法7脂質検査として,空腹時採血でのTC,TG,HDL-Cを測定し,LDL-Cを算出することを基本とする.また,糖代謝,血圧,腎機能および更年期症状の有無についても同時に検査する.閉経前の脂質異常症患者においては,生活習慣の改善による非薬物療法が中心となる.低および中リスクに分類される閉経後の脂質異常症患者において, ①更年期症状を有さない場合:HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)やフィブラート系薬などが適応となる. ②更年期症状を有する場合:HRT注)単独あるいはHRTとスタチン,フィブラート系薬などとの併用投与が適応となる.FHは冠動脈疾患のリスクがきわめて高いことから,早期診断と厳格な管理が推奨される.◉2018年度改訂版の要点 『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版』では,絶対リスクの評価をNIPPON DATA80から算出していたが,アウトカムが冠動脈疾患の発症ではなく死亡であること,低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)や高比重リポ蛋白コレステロール(HDL-C)の情報がないこと,スタチンのない時代にベースライン調査が行われていたことからより新しい集団に適用するとハイリスク群の死亡率が実測値よりも高く算出されることなどの問題が生じ,現状に合わなくなっていた.そこで2017年版では,「日本人の動脈硬化性疾患の発症・死亡を予測する評価法は存在しているか」というClinical Questionを設定してシステマティック・レビューを行った.その結果,9研究が選定されたが,その中で,①,LDL-CとHDL-Cの両方を予測指標として組み込んでいる,②LDL-Cレベルを詳細に分類している,③脳出血をエンドポイントとして含んでいない,④アウトカムが死亡ではなくイベント発症に設定している,ことから,最終的に吹田研究を選択し,吹田スコアに基づいた層別化を行った.本管理指針でも,『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版』に則った脂質異常症の検査・管理方法について解説する.脂質検査の方法1 空腹時採血での総コレステロール(TC),トリグリセライド(TG),HDL-Cを測定し,Friedewald式(LDL-C=TC-HDL-C-TG/5)にてLDL-Cを算出することを基本とする.ただし,食後採血の場合やTGが400mg/dL以上のときにはこの式を用いることができないため,non-HDL-C(=TC-HDL-C)を用いる.LDL-C直接法は,以前よりも正確性が上がってきており,Friedewald式の代わり注)36~39ページを参照のこと26
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