2375高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン  第3版
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1) 臨床的特徴 高尿酸血症は,それ自体による自覚症状は認めず,健康診断等で偶然指摘されることも多い.高尿酸血症の原因として,尿酸産生亢進をきたす核酸代謝関連酵素の遺伝子変異(ヒポキサンチン─グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ〈HGPRT〉欠損やホスホリボシルピロリン酸〈PRPP〉合成酵素過剰症)と尿酸トランスポーター(輸送体)の機能低下型遺伝子変異などの単一遺伝子異常と多遺伝子異常などが示唆されている.また,食事,飲酒,運動などの生活習慣を含む多様な環境要因も高尿酸血症の発症に強く関与する.高尿酸血症の定義は尿酸の溶解度から決められており,男女問わず血清尿酸値が7.0 mg/dLを超える状態と定義される.高尿酸血症は,尿酸産生過剰型,尿酸排泄低下型,混合型に大別され,最近では腎外排泄低下型(腎負荷型)の存在も提唱されている. 高尿酸血症が続くと体内の尿酸プールが増加し,関節や腎尿路系に尿酸一ナトリウム(MSU)が結晶として析出する.関節に析出した尿酸塩結晶を白血球が貪食し炎症を惹起するサイトカインが分泌されると関節炎が起こるが,これが痛風関節炎である.尿酸結晶により尿路結石ならびに慢性間質性腎炎による腎不全などの高尿酸血症および高尿酸尿症による重篤な合併症も起こりうる.高尿酸血症には高血圧やメタボリックシンドロームなどの生活習慣病や脳・心血管イベントなどの臓器障害の合併が高頻度に認められる.そこで,高尿酸血症が生活習慣病や臓器障害の予測因子または危険因子であるという報告があるが,マーカーであるという報告も混在し日常臨床で無症候性高尿酸血症を生活習慣病や臓器障害のマーカーとして取り扱うかリスクとして取り扱うかは意見の分かれるところである. 尿酸降下薬には尿酸生成抑制薬であるXOR阻害薬と尿酸排泄促進薬があり,原則的には尿酸産生過剰型(腎負荷型)には尿酸生成抑制薬を使用し,尿酸排泄低下型には尿酸排泄促進薬を使用することが推奨されていた.しかし,フェブキソスタットやトピロキソスタットといった尿酸生成抑制薬は中等度の腎障害にも使用が可能であり,排泄低下型高尿酸血症にも効果的であることから,上記の病型分類に応じて尿酸降下薬を選択する意義が議論されている.2) 疫学的特徴 食生活の欧米化に伴ってわが国の高尿酸血症患者数は年々増加し,2010年頃には成人男性の20~25%に高尿酸血症が認められる.また,高尿酸血症の頻度は全人口の男性で20%,女性で5%と報告されている.高尿酸血症により引き起こされる痛風の有病率は,30歳以上の男性では1%を超えていると推定され,同一地域における各種調査を含む報告から,現在も増加傾向であると考えられる(図1).高尿酸血症患者のおよそ80%には高血圧,肥満,耐糖能異常や脂質異常症といった生活習慣病が合併し,1人の高尿酸血症患者に複数の生活習慣病が重複することが多い.その背景には内臓脂肪蓄積やインスリン抵抗性が関与することが示唆されている.このため高尿酸血症は動脈硬化,脳卒中,虚血性心臓病,心不全などの臓器障害とも密接な関連をもつ. 国民生活基礎調査で推定される痛風患者数は,2016年の時点では全国で100万人を超えているとされている(図2).これらの調査による痛風患者数も急速に増加傾向である.一方,痛風患者の年齢分布は60歳代が最も多く,次いで50歳代と70歳代がほぼ同数となっている.60歳以降の痛風患者の減少の理由は明らかではない.初発年齢は30歳代が最も多く,次いで40歳代,50歳代と報告しているものが多い.3) 診療の全体的な流れ 高尿酸血症(血清尿酸値>7.0 mg/dL)をみた場合,痛風関節炎の症状やその既往を有するまたは痛風結節を有している場合は,薬物治療の対象となる.急性痛風関節炎に対しては,NSAIDまたはステロイドの投与が適応されている.しかし,急性痛風関節炎の発作に対して行う第一選択の薬物治療としてNSAID,ステロイド,コルヒチンのいずれを用いるかは定まっていない.一方で前兆がある場合はコルヒチンの投与を行うことで発作への移行を抑制している.痛風関節炎が消失したら,一定の期間をおいてから尿酸降下薬を開始する.この場合は痛風の再発を予防するためにコルヒチンを併用(コルヒチンカバー)することがあるがその投与期間に関してはさまざまな意見がある.血清尿酸値は痛風関節炎の再発予防を目的として6.0 mg/dL以下を目標とする. 痛風結節を有する症例に対しては血清尿酸値を6.0 mg/dL以下にすべきとされているが,5.0 mg/dL以下にコントロールすることがより早期に結節を縮小高尿酸血症・痛風の基本的特徴2 1 背景・目的・スコープおよび使用上の注意19第1章作成組織・作成方針

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