2376稀少部位子宮内膜症診療ガイドライン
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3総論 稀少部位子宮内膜症総論 子宮内膜症の病因としては月経時に剝脱した子宮内膜が月経血とともに腹腔内に逆流して腹膜に着床生着するとする移植説が最も有力で,ほかにも,腹膜の化生により発症するとする化生説,血行性に子宮内膜が転移するとする血行性転移説,リンパ行性に子宮内膜が転移するとするリンパ行説などがある.すべての子宮内膜症を一元的に説明できる説がないため,病巣のでき方は多様なのかもしれない.稀少部位子宮内膜症においては臓器ごとに主たる病因が異なっているようである.肺の実質にできる子宮内膜症では血行性の転移が最も考えられ,直腸の子宮内膜症では移植説によりできた病巣の浸潤により発生する可能性が高い.病態として共通であるのは,局所における子宮内膜の増殖と,炎症・線維化による組織の損傷や狭窄,疼痛,ならびに病巣における出血などである.ただし,臓器ごとに中心となる病態は異なっており膀胱や腸管では筋層での反応性の肥厚が多いのに対し,横隔膜では穿孔,肺実質や腸管では月経時の出血が多い. 症状も臓器ごとに多様である.胸腔の子宮内膜症では月経随伴性気胸や月経随伴性血胸および喀血が認められるが,膀胱の子宮内膜症では月経時の排尿痛や膀胱不快感の頻度が高く,血尿がみられることもある.腸管では下血がしばしばみられ,狭窄によるイレウスが起こることもある.同様に尿管では狭窄により背部痛をきたすことがある. 一般の子宮内膜症の検査は問診,内診,超音波・MRIなどの画像診断,腫瘍マーカーCA125測定が基本となっているが,稀少部位子宮内膜症においても基本は同じである.というのは,稀少部位子宮内膜症にはしばしば一般の子宮内膜症が合併しているからである.稀少部位子宮内膜症ではこれらに加えて,子宮内膜症発症部位の検査を行う.肺では胸部CT検査,膀胱では膀胱鏡,大腸では注腸検査や大腸ファイバースコープ,などを行う. 確定診断には病理学的診断が必要であるが,治療は臨床診断に基づいて行うことも多い.臨床診断のためには特徴的な症状の問診,特徴的な画像所見の読影,他の類似疾患(悪性腫瘍を含む)の除外を行う.特に月経に伴う症状の聴取は,子宮内膜症を疑う重要な手掛かりになることが多い.確定診断を目指しても必ずしも確定診断できるわけではなく,たとえば,腸管の子宮内膜症では病巣の生検を施行しても,病理学的に病変が確認されないことがしばしばある.また,診断的治療として子宮内膜症に対する薬物治療を行い,症状や病巣の反応をみて臨床診断する方法もある.どのような方法で診断するかについては,臓器ごと,患者ごとに個別化して判断する.病因・病態症 状検 査診 断

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