2376稀少部位子宮内膜症診療ガイドライン
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 腸管子宮内膜症は稀少部位子宮内膜症の中では最も発症頻度が高く1),子宮内膜症全体の12~37%を占める2)3).最も高頻度に認められる部位は直腸・S状結腸で,小腸(回腸),虫垂の順に頻度は低下する.臨床症状として下腹部痛や下血が多いが,月経周期と関連して症状が出現する症例はおおよそ半数で,初期には月経周期に一致しているものの,進行に伴って月経周期と無関係に症状が出現するようになりQOLを著しく低下させる.病巣の多くは腸管の漿膜下層から固有筋層に存在し,粘膜面にまで達するものは少ない(図1).そのため,内視鏡下の生検で確定診断される症例は少なく,生検で子宮内膜類似の組織が採取された場合でも,腺癌と診断され悪性腫瘍との鑑別が困難となる場合も多い.したがって,術前検査所見から腸管子宮内膜症と診断される頻度は疑診例も含めて38~42%にとどまる4)5).1.直腸・S状結腸子宮内膜症 子宮内膜類似の組織が腸管の固有筋層から粘膜面へ進展しながら腫瘤を形成するタイプと,腸管の漿膜側で増生し腸管の狭窄をきたすタイプに分類される.腫瘤を形成する場合は,腫瘤内の子宮内膜類似の組織が月経周期とともに出血を繰り返しながら次第に増大し,月経期に下血をきたすようになる.一方,子宮内膜類似の組織が腸管壁内に出血を繰臨床的特徴第1章1総説腸管子宮内膜症直腸上皮固有筋層図1 直腸子宮内膜症症例の病理組織所見矢印のように子宮内膜症の病巣が,直腸の固有筋層を越え,粘膜面にまで達している.子宮内膜類似の腺上皮とその周囲に子宮内膜様の間質が拡がっている.

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