129C‒5誘発筋電図(磁気刺激を含む)と神経伝導検査解 説 医★★★技★★★ これは,臨床神経生理学に掲載された刺激の波及(current spread)に関する総説1)でも呈示した例である(文献1) 図3参照). 正中神経の運動神経伝導検査(motor nerve conduction study:MCS)では,記録電極の探査電極(活性電極,G1)は母指球の短母指外転筋(abductor pollicis brevis:APB)上におかれる.ここで尺骨神経は母指内転筋や短母指屈筋(深頭)などの母指球内の筋も支配しているために,正中神経MCSにおいて尺骨神経に刺激が波及(spread)すると,記録される複合筋活動電位(compound muscle action potential:CMAP)に尺骨神経支配の筋のCMAPが加わるために,CMAPが増大してしまう.正中神経の手関節部刺激では,特に痩せた女性などでは,刺激強度30 mA(持続時間0.2 ms)前後から尺骨神経へのspreadが起こり得る.したがって,不必要に刺激を上げていくと,spreadが起こって,手関節部刺激CMAPが見かけ上増大する.肘部ではspreadは起こらないので,肘刺激CMAPが手首刺激CMAPよりも小さくなって,伝導ブロックがあると間違えてしまう. 本例は,最初のAが初心者の施行した波形で,このspreadが起こったものであり(手関節刺激は0.2 ms 100 mA),伝導ブロックありと判断されていた.Bと図1が熟練検者がやり直したものであり,手関節刺激は0.2 ms 30 mAで最終記録されている.本例は原因不明の軸索性の多発性単ニューロパチーであり,障害されている正中神経は閾値が高く,最大上刺激を得るの問題095刺激と運動アーチファクトと除去対策母指の筋力低下を訴えた患者で施行された,正中神経運動神経伝導検査の波形を示す.Aは初心者の施行したもの,Bは熟練検者が何かに注意してやり直した結果である.熟練検者が払った注意はどれか.① 手首刺激を最大上刺激にする.② 肘刺激を最大上刺激にする.③ 手首刺激が強すぎないようにする.④ 肘刺激が強すぎないようにする.⑤ 肘刺激時にcollision法を行う.5 ms5 mVAB手首肘手首肘問題095 刺激と運動アーチファクトと除去対策
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