2378脳血管内治療の進歩-ブラッシュアップセミナー2018
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143はじめに1 急性期脳梗塞に対する機械的血栓回収療法(mechanical thrombectomy: MT)と内科単独療法の比較試験の結果が続々と発表され,いまやMTは標準治療となっただけでなく,その対象を拡大させるための試みが進んでいる.有効性が証明されたランダム化比較試験(randomized control trial: RCT)では患者選択が成功の鍵を握っていることはいうまでもないが,実臨床においてもこれらの選択基準を参考とすることで,真に有効な患者に対する治療が行える.さらに今後明らかにすべき問題点も見えてくるであろう. 再灌流療法の目的は虚血ペナンブラ領域を救済することであり,すでに不可逆的虚血域(虚血コア)が広汎な場合には再灌流が得られても神経症状の改善が見込めないだけでなく,出血性梗塞や再灌流障害によりかえって症状を悪化させてしまう可能性がある.このため,再灌流療法の対象となる患者を選択するうえで,虚血コアおよび虚血ペナンブラ領域を同定する画像診断が重要となる.これまでのRCTにおける画像診断基準を表1に示す.虚血コア領域の診断(図1)2 単純CT(non-contrast CT: NCCT)における早期虚血性変化(early ischemic change)は,灰白質の軽微な濃度低下と軽微な腫脹によって認められるが,主に血管性浮腫によって組織の水分量が増加して信号が低下した領域は虚血コアと考えられる.ただし,皮質濃度低下を伴わず脳浮腫のみを呈するisolated cortical swelling (ICS)は,ペナンブラ領域を表している可能性がある1).CT灌流画像(CT perfu-sion: CTP)では,脳血流量(cerebral blood flow: CBF)あるいは脳血液量(cerebral blood 再開通療法の症例選択 ―エビデンスを見直す―III 新時代を迎えた急性再開通療法A.患者選択はtime baseからimage baseへ,その理論を学ぶ1国立病院機構大阪医療センター脳卒中内科 山上 宏◉◉急性期脳梗塞に対する血栓回収療法のランダム化比較試験では,画像診断にもとづいた患者選択が行われた.◉◉画像診断においては,閉塞血管部位とともに虚血コアおよび虚血ペナンブラ領域の診断が重要である.◉◉虚血コアの診断には,単純CT,CT perfusion(CTP),MRI拡散強調画像(DWI)が用いられるが,DWIが最も感度が高い.◉◉虚血ペナンブラ領域の診断には,CTPまたはMRI灌流画像が用いられるが,わが国では十分に普及しておらず,臨床的な必要性について今後の検討が必要である.ssential PointE

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