2383EXPERT膠原病・リウマチ 改訂第4版
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語源 “リウマチ”の語源は,Hippocrates(BC 460~377)が残した言葉“rheuma(ロイマ)”に由来している.rheumaとは,ギリシア語で“流れる物質”を意味している.古代体液病理学では,脳から粘液が流れ,うっ滞するところに病気が生ずると考えられていたのである.したがって,粘液が関節にうっ滞すると腫脹や発赤が生じ関節炎になると考えられ,rheumaと関節炎が結びつけられた.概念 関節リウマチ(rheumatoid arthritis;RA)を含む膠原病の位置づけは,リウマチ性疾患,結合組織病,自己免疫疾患の重合した疾患群と捉えることができる(図1).病因的には自己免疫疾患であり,結合組織を炎症の場とした全身性の慢性炎症性疾患として理解することができる.a.リウマチ性疾患 “リウマチ性疾患(rheumatic disease)”とは,臨床における概念であり,関節炎を含む関節疾患を総称した名称である.そのなかには,膠原病,RAばかりでなく,痛風,リウマチ熱,変形性関節症,強直性脊椎炎,感染性関節炎,反応性関節炎などが含まれる.b.膠原病/結合組織病 “膠原病(collagen disease)/結合組織病(connec-tive tissue disease)”とは,病理組織学的概念である.1942年,Paul Klemperer1)は,結合組織にコラーゲン線維の変化とフィブリノイド変性(fibri-noid degeneration)がいくつかの疾患で共通にみられることから,これらを1つのグループにまとめて“全身性膠原病(diffuse collagen disease)”と命名した.RA,全身性エリテマトーデス(sys-temic lupus erythematosus;SLE),強皮症,多発性筋炎/皮膚筋炎(polymyositis/dermatomyosi-tis;PM/DM),結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa;PN),リウマチ熱の6疾患である.フィブリノイド変性とは,結合組織の変性がフィブリン様の染色性を呈することに由来している.しかし,コラーゲンのみの病気ではないために,欧米では,William E Ehrich(1952年)の提言により,“結合組織病”が使用されるようになった.一方,日本では,“膠原病”の名称が一般的に使用されている.c.自己免疫疾患 “自己免疫疾患”とは,病因論に基づく概念である.抗核抗体やリウマトイド因子をはじめとした自己抗体,関節や各臓器に浸潤した自己反応性リンパ球などによる自己免疫応答が病因として関与している疾患概念である.したがって,膠原病やRAのみならず,Basedow病,重症筋無力症や多発性硬化症も含まれる.歴史(表1)a.関節リウマチ(rheumatoid arthritis;RA) Bruce M Rothschildら2, 3)は,北アメリカの3,000~5,000年前の古代インディアン84体の遺骨を調査し,そのうちの6体にRAと類似する骨病変をみつけた(図2).この報告は,紀元前にRAが存在していたことを示す貴重なものである.一方で,古代エジプトの人骨調査では,強直性脊椎炎,痛風,変形性関節症は発見されているが,RAの人骨はみつかっていない.ヨーロッパ1232第1部 膠原病・リウマチの概念と歴史A膠原病・リウマチの概念と歴史 筑波大学医学医療系膠原病リウマチアレルギー内科 住田孝之 

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