2383EXPERT膠原病・リウマチ 改訂第4版
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概念,原因a.咳(cough) 咳は気道刺激による咳反射で出現する.咳反射は気道内の分泌物や異物の排出に重要であり,痰を伴う湿性咳嗽や異物,刺激性ガスによる咳は安易に止めない.一方,乾性咳嗽は主として気道外の原因によるもので,不眠や体力消耗を避けるためにも止める必要がある. 咳反射の受容体は気道粘膜や胸膜,心膜,横隔膜などにあり,各種刺激(化学的・器械的,感染・炎症,気道圧迫,肺循環障害など)に反応する.喉頭部の刺激は上喉頭神経,気管・気管支粘膜や肺の伸展受容体からの刺激は迷走神経を介し咳中枢に伝わる.呼吸中枢は迷走神経により声門を閉鎖,肋間神経,横隔神経などを介し呼吸筋を収縮させ咳となる.b.痰(sputum) 痰は気道上皮からの分泌液が異常に増加したもので,原因により性状・量が異なる.痰を伴う湿性咳嗽は乾性咳嗽に比べ細菌などの感染症が問題となる. 痰の喀出が困難であると,気道を閉塞し換気障害や呼吸困難をきたし,感染を起こしやすく,呼吸不全,窒息の危険もある.臨床所見 咳,痰などの呼吸器症状は,①膠原病自体の臓器合併症である肺病変の他,心病変や腎病変などにより出現する場合と,②ステロイド療法や免疫抑制療法などの治療に伴う日和見感染により二次的に出現する場合とがある. 膠原病の肺病変では特に間質性肺炎の合併頻度が高く予後にかかわるため重要である.発症初期には無症状で,咳や呼吸困難などの症状出現時にはすでにかなり進行している場合が多い.乾性咳嗽かどうか,呼吸困難の有無・程度とともに,出現時期,増悪傾向に注意して問診し,進行経過(急性,亜急性,慢性)を把握する. 身体所見では胸部聴診が重要で,湿性咳嗽では水泡音(coarse crackle)が主であるが,乾性咳嗽では背側下部でVelcroラ音(捻髪音)(fine crack-le)を聴取し間質性肺炎を疑う. 他の随伴症状として,胸痛,発熱,喘鳴,チアノーゼ,咽頭痛,心雑音,浮腫などにも注意する. 治療中の膠原病患者に出現する呼吸器症状では日和見感染症(細菌,結核菌,真菌,ウイルス)の可能性が最も高い.一般に,膿性痰を伴う湿性咳嗽で発熱を伴う場合は細菌感染症を疑い,喀痰を培養し抗菌薬を投与する.治療抵抗性の場合は結核や真菌性の場合もあるので精査する.ウイルス感染症では一般に間質性肺炎であり,強い乾性咳嗽と呼吸困難を認める.また,薬剤性肺障害の可能性も念頭におくべきである.検査所見(図1)a.血液・尿検査 感染症の可能性が高い場合,白血球増加,CRP上昇,赤沈促進などの炎症反応を調べ,喀痰塗抹培養〔一般菌,結核菌,非結核性抗酸菌(non-tu-berculousis mycobacteria;NTM),真菌〕を行う.尿中肺炎球菌抗原,尿中レジオネラ抗原の測定.真菌ではβ-d-グルカン,カンジダマンナン抗原,アスペルギルス抗原の測定.ニューモシスティス12378第3部 症状・所見からみた膠原病・リウマチ《症状》H呼吸器症状(咳,痰)respiratory symptom(cough, sputum)千葉県済生会習志野病院リウマチ膠原病センター 縄田泰史症状

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