2383EXPERT膠原病・リウマチ 改訂第4版
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概念,歴史 1888年にドイツのMikulicz1)が,続いて1925年にフランスのGougerot2)がドライアイ,ドライマウス,関節炎を伴う患者を報告した.さらに,1930年にスウェーデンの眼科医Henrick Sjögren3)が関節リウマチ(rheumatoid arthritis;RA)に合併した乾燥性角結膜炎の1例を報告し,1933年に同様の症状をもつ19例を発表して以来,本症の存在が注目されるようになった. Sjögren症候群(Sjögren’s syndrome;SS)は,慢性唾液腺炎と乾燥性角結膜炎を主徴とし,多彩な自己抗体の出現や高γ-グロブリン血症をきたす自己免疫疾患の1つである.病理学的には,唾液腺や涙腺などの導管,腺房周囲の著しいリンパ球浸潤が特徴とされる.腺房の破壊,萎縮をきたし乾燥症(sicca syndrome)が主症状であるが,唾液腺,涙腺だけでなく,全身の外分泌腺が系統的に障害されるため,autoimmune exocrinopathyと称されることもある.疫学 2010年度に施行された最新の厚生省特定疾患自己免疫疾患調査研究班の検討では,Sjögren症候群の有病率は人口10万人当たり約55人,すなわち66,000人とされている4).実際には,その数倍の20万~50万人と予想されている. 男女比は1:17.4で女性に多く,発症年齢のピークは40~60歳代である.分類 Sjögren症候群は他の膠原病の合併がみられない一次性(primary)Sjögren症候群とRAや全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythemato-123211疾患としてみた膠原病・リウマチ《膠原病》第4部CSjögren症候群CSjögren症候群Sjögren’s syndrome ; SS筑波大学医学医療系膠原病リウマチアレルギー内科 住田孝之膠原病典型的な症例55歳,女性.3年前より多関節痛と耳下腺の腫脹と疼痛が時々出現していた.半年前より口腔内乾燥感や目の疲れやすさも出現してきた.1か月前より,37°C前後の微熱と顔面および四肢に10円玉ぐらいの皮疹が出現したため来院.身体所見 顔面,四肢に環状紅斑を認める.両側耳下腺と両側顎下腺が軽度腫脹.両側頸部に数個のリンパ節を触知.肺音は清で心雑音はなし.手指関節の一部に圧痛を認めるが,はっきりとした腫脹や変形はない.深部反射正常,病的反射なし,知覚異常を認めない.検査所見 赤血球413万/μL,白血球2,900 /μL,血小板26万/μL,赤沈43 mm/時,CRP 0.05 mg/dL,TP 8.9 g/dL,IgG 3,200 mg/dL,IgG4 70 mg/dL,IgA 575 mg/dL,IgM 162 mg/dL,γ-グロブリン32%,AST 29 IU/L,CK 71 IU/L,Na 139 mEq/L,K 3.8 mEq/L,Cl 107 mEq/L,抗核抗体256倍〔斑紋(speckled)型〕,抗SS-A抗体32倍,抗SS-B抗体4倍,リウマトイド因子745U/L,抗CCP抗体(-). 導管周囲に50個以上の単核球浸潤および唾液腺上皮腺炎が認められ,一部の導管構造が破壊されている.小唾液腺生検組織所見

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