2384地域医療学入門
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地域社会の状況都市部への人口集中と過疎問題の顕在化 1960年代以降,高度経済成長により,都市部への人口流入が進み,地方では過疎問題が発生した.人口流出した地方は,地域社会の機能が低下し,都市部との地域格差が生じた.昭和45(1970)年に過疎地域対策緊急措置法が制定され,過疎対策が始まった.同法は,昭和55(1980)年からは過疎地域振興特別措置法,平成2(1990)年からは過疎地域活性化特別措置法,平成12(2000)年からは過疎地域自立促進特別措置法に引き継がれているが,人口減少,地域社会の疲弊を止めるには至っていない1).このような状況下,行政財政基盤の確立のために1999年から市町村合併が推進されてきた.いわゆる「平成の合併」である.これにより,市町村数は3,232(1999年3月)から,1,727(2010年4月)にまで減少した.「平成の合併」の評価については,賛否が分かれるところではあるが,特に過疎地域においては旧市町村の活力の低下,住民の声が届きにくくなり住民サービスが低下した,などの問題点が指摘されている2).過疎関係市町村 過疎地域自立促進特別措置法においては従来1abの過疎地域市町村(2条1項)に加えて,合併により誕生した新たな市町村全体で過疎地域とみなされる市町村(33条1項),合併前に過疎地域市町村であった地域を含む市町村(33条2項)も対象としている.2018年4月現在,全国1,718市町村のうち817(47.6%)が本法の対象となっている(表1)1).また,これら過疎地域には,全人口の8.6%が居住している.面積は全国土の59.7%を占めており,都道府県別では秋田,大分,島根では80%以上を占めている.過疎地域の高齢化率は36.6%(全国26.3%)である.また,過疎地域の就業人口割合は一次産業14.5%(全国4.0%),二次産業23.9%(同25.0%),三次産業61.6%(同71.0%)と一次産業に従事している人が多い1).過疎地域と社会資源 道路,水道などの社会インフラの整備は,過疎地域においても進んでいる.一方,人口減少,高齢化により対人サービスは維持が困難となり縮小,集約化せざるをえない状況にある. たとえば,過疎地域の保育所は1996年には4,147か所あったが,2016年には3,224か所に減少している(厚生労働省:社会福祉施設等調査).過疎地域の小学校は2000年には4,890校あったが,2016年には3,640校に,中学校は同期間に2,053校から1,866校と減少している(総c第1章 地域医療学総論A 地域社会と地域医療地域医療の現状分析3A-7-1) 地域医療への貢献,B-1-7) 地域医療・地域保健コアカリ総論I-6-B 医療計画国 試● 国土の約60%を占める過疎地域に,人口の8.6%が居住している.● 全国的には医療需要は増加しているが,過疎地域においては減少の一途を辿っている.● 過疎地域(無医地区,離島を含む)の医療は,特別な対策が必要となる.キーポイント12

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