2384地域医療学入門
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地域包括ケアシステムとは背 景 日本は世界で最も高齢化が進んだ国である.それに伴い,要介護者・社会保障給付費増加が問題となっている.従来の医療や福祉モデルではこの高齢者社会を支えるのは困難である.そこで社会保障費を抑えつつ効率的に高齢者を支える仕組みとして,地域包括ケアシステムが政策的に導入され,現在全国に広がっている.概 要 地域包括ケアシステム(community-based in-tegrated care system)とは,1974年に山口昇(公立みつぎ総合病院元病院長)が命名・提唱したもので,地域を基盤とした,各職種や組織の連携・統合である.“地域を基盤としたケア(com-munity-based care)”と“包括ケア(integrated care)”の2つの概念が融合したものと考えるとわかりやすい.1)包括ケア 包括ケア(integrated care)のintegrateとは“統合する”という意味である.多くの医療・介護・福祉・保健サービスは別々の組織で形成されている.それにより各職種や組織で連携が1abとれなければ,サービスがシームレス(円滑)に行われず高齢者の状態を悪くしてしまう.たとえば高齢者が心不全で入院したとしよう.しかし,介護支援施設と病院との連携がとれていなければ,入院中悪化した歩行機能に対して,訪問リハビリや介護用具などの導入が遅れ,病気(心不全)は治ったが,逆に寝たきりとなってしまう.これは防ぎきれた寝たきり状態である.この問題を解決するためには,各職種・組織の連携(linkage)が必要である.そして連携をレベルアップした状態が統合(integration)である. 統合は医療・介護・福祉・保健を担う施設が構造的に一緒の組織となることである(図1)1).この定型的な例が,2-a地域包括ケアシステムの誕生で説明するみつぎ総合病院である.同病院では,急性期・慢性期医療を展開するだけでなく,保健福祉総合施設(各種介護関連施設を含む)・保健福祉センター(保健・福祉などの行政機能を含む)・訪問系サービスなどを有することで,統合という状態を実現した.機能的な連携だけでなく,構造的にも統合されれば,よりシームレスなサービス提供が可能となる.第2章 システムとしての地域医療A 地域包括ケアシステムの概念地域包括ケアシステム9A-7-1) 地域医療への貢献,B-1-6) 社会・環境と健康,B-1-7) 地域医療・地域保健コアカリ総論I-3-A 保健・医療・福祉・介護の組織と連携,総論II-5-B 生活習慣病と保健対策,総論II-6-A 現状と動向,総論II-6-B 高齢者の健康保持・増進国 試● 地域包括ケアシステムとは,各職種や組織の連携・統合である.● 地域包括ケアは公立みつぎ総合病院で生み出され,2012年より国の政策となった.● システム構築にはリーダーシップが必要である.キーポイント100

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