2385小児救急治療ガイドライン 改訂第4版
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A小児救急医療の特徴56家であることを,自身のdutyとして率先して示すべきである.そして,小児科医の必要性に対する社会的コンセンサスが得られたときに初めて,小児科医が子どもたちの真のadvocatorになることができると考えられる.夜間・時間外救急医療であっても常に,小児科医の診療を求める保護者の心情に対して,医療側がその重圧を避けるため,“救急疾患ではなく不要な受診”などと決して敬遠してはならない問題と思われる.種々の不安を抱えて小児救急医療現場に殺到する保護者に,いろいろな形での「癒し」を与える医療ができることが,小児救急医療の理想像であると考える.このような保護者に満足度の高い救急医療を提供するにあたって,現行のような兼任体制での小児救急医療の実施は,医療側のモチベーションが高まらない最大の原因と考えられる.医療側のストレス増加のみならず,保護者とのトラブルや医療過誤などとも直結する問題である.いかにモチベーションの高い小児救急専任医としての医療活動が行える体制を構築するかが,余裕ある小児救急医療の実施において重要である.小児救急専任医として医療活動が一定期間行える状況を作り出すことは,小児科医のモチベーションアップのみならず,一般救急医や他科医の参入を容易にするであろうし,保護者の小児科専門医志向にも変化を起こすことが期待される.いずれにせよ,小児救急医療に対する保護者のニーズの高まりに対して,医療側がどのような形で応えるのかが問われている状況である.つまり,いかに質の高い,ゆとりのある医療提供が行えるかを積極的に模索する時代といえる.その一つとして,医療側と受療側とが協働し,大事な医療資源である小児救急医療体制の拡充を行うことが重要であろう.しかし,前述のような小児救急専任医による救急医療実施の前に,一般医師など小児救急医療に日頃あまりかかわらない医師群による小児救急医療提供も,わが国の現状では避けられない事実である.保護者が小児科医診療を強く要望するなか,他科医における小児救急医療実施において,その質の確保も十二分に対応していくべき問題である.医療界全体が小児救急医療の実施において,保護者からの信頼を確保し続けることが最も重要である.地域を,国を担ってくれる子どもたちの健全育成のための支援の一環としての小児医療・小児救急医療の提供に,医療界自体が心構えにおいても医療技術においても責任を持って対応していくことが望まれているといえる.よりよい小児救急医療提供のために保護者からのハイレベルな要求に翻弄されている小児救急医療現場であるが,実際に,わが子の病気が軽症であることが保護者の願いであり,その願いに応えるのが小児救急医療提供者であるといえる.このような意識への変換が,われわれ全医療提供側に求められている.加えて,少子化や育児不安の強さや傷病自体の変化(newmorbidity化)を考えれば,小児救急医療の提供自体が患児・保護者の癒しにつながることこそ,小児救急医療の最終目標と考えられる.このような観点からも,いかに医療提供側が余裕ある救急診療を行うかが,良質・高質の小児救急医療の提供を行えるかに直結していると思われる.兼任で小児救急医療を応急診療として担うのではなく,可能な限り,専任として小児救急医療を学究する姿勢が望まれる.これにより,小児救急医療で散発している医療事故も減るであろうし,実際に医療側と受療側の信頼関係が再構築され,ひいては育児不安の大きい保護者が小児救急医療を通して自己の不安が解消され,癒しを得る体制ができていくものと予測される.いずれにせよ,小児科専門医であろうと非小児科医であろうと,小児救急医療に従事する限りは,このような専任体制あるいは小児救急を専攻するという,救急医療に高いモチベーションで臨むことができる診療体制が構築されることを願うばかりである.

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