2385小児救急治療ガイドライン 改訂第4版
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A中枢神経系疾患4.無熱性けいれん163意すべきは,この時期には全般性強直間代性けいれんは起こらないことである.新生児期の中枢神経障害の原因としては,低酸素性脳症や頭蓋内出血,髄膜炎,脳症など,早急に診断しなくてはいけない疾患が多く含まれる(表2).けいれん初診時,診療にて打撲痕や着衣の汚れ,骨折など認めた場合には虐待の可能性も念頭に早めに頭部CT,またはMRI,眼底検査が必要である.新生児けいれんにおいて,てんかんは特殊な場合を除き,むしろまれである.非てんかん性発作には無呼吸,ちくでき,良性新生児睡眠時ミオクローヌス,驚愕症などがある.けいれんがてんかん性のものかどうかは発作時脳波が不可欠であり,この時期特有のてんかんには良性家族性新生児てんかん,大田原症候群,早期ミオクロニー脳症,ビタミンB6依存性てんかんなどがある.Point非てんかん性発作良性新生児睡眠時ミオクローヌスは生後2週間頃から睡眠時のみ出現し,四肢をピクッと収縮させる動作を繰り返す.1歳くらいで自然に消失する.ちくできは,満期産児の最も有名な不随意運動である.音や触れただけで四肢を小刻みに震わせる動作で,他動的に止めると消失する.驚愕症は,覚醒時の筋強直,睡眠時のミオクローヌス,刺激に対する過度の驚愕を引き起こすグリシン作動性遺伝子変異が見つかっている.クロナゼパム内服でコントロール可能である.b後期乳児期(生後3~12か月)のけいれん乳児期は発達上の変化がめざましく,けいれんが起きやすくなる年齢である.脳が未熟であるため,発作は年長児に比べ非定型的である.よって,観察者への問診が極めて参考になる.てんかんと間違われやすい疾患には,表3にあげたようなものがある.乳児期のおもなてんかんには,難治性ではWest症候群,Dravet症候群(乳児重症ミオクロニーてんかん),他の症候性てんかん(様々な中枢神経障害:脳炎・脳症・髄膜炎・代謝疾患・脳血管障害・先天奇形・外傷などが原因で起こるてんかん),良性なものとしては乳児良性部分てんかん,乳児良性ミオクロニーてんかんなどがある.表1新生児期のけいれん発作1.微細発作異常眼球運動水平性眼振,連続的瞬目,持続性開眼,眼球偏位口舌部自動症吸啜様異常運動,咀嚼運動,舌突出,しかめ顔体肢自動症ペダル踏み,ボクシング動作,クロールのような異常運動自律神経系の変動血圧上昇,頻脈,徐脈,無呼吸,多呼吸,唾液分泌増加など2.焦点性間代発作上下肢,顔面などの律動的な筋収縮で,静止しようとしても止まらない3.焦点性強直発作短時間持続する肢体の強直や眼球偏位4.全般性強直発作伸展位を示すことも屈曲位を示すこともある.重大な脳障害を示唆する5.ミオクロニー発作短い筋収縮で単発性,不規則に出現6.スパズムシリーズ形成し,頭や四肢をピクッと動かす短い強直発作表2新生児発作の原因疾患低酸素性脳症低体重児,重症仮死,重症黄疸など急性代謝障害低血糖,低Na血症,低Ca血症など感染症脳炎,脳症,髄膜炎,敗血症など脳血管病変頭蓋内出血,脳梗塞など悪性新生物先天性脳腫瘍など薬物母体由来,マルトリートメントなど先天性代謝疾患アミノ酸・有機酸・脂肪酸代謝異常など脳形態異常皮質形成異常,水頭症など

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