2388甲状腺専門医ガイドブック 改訂第2版
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513.甲状腺疾患の分類と重症度甲状腺の臨床◆総論Ⅱ 甲状腺疾患は解剖学的な位置関係から病変部の視診や触診が可能という特徴をもち,内分泌器官としての機能的な特徴が臨床症状を形成する病態と組み合わせて分類することができる.甲状腺機能亢進症,甲状腺機能低下症,甲状腺腫瘍は一般人口における罹患率の高いコモンディジーズであり,最も代表的な内分泌疾患であるにもかかわらず診断されていない頻度も高い1).これらの疾患は,甲状腺ホルモン値から分類されることが多いが,病因から分類すると,遺伝子異常や腫瘍性病変の一部は比較的頻度が少ない疾患である.甲状腺疾患は病因に従って分類することができるほか,先天性か後天性か,原発性か続発性かによっても分類が可能である.集積性からみると,世界的に最も頻度の高い甲状腺疾患はヨウ素欠乏による地方性甲状腺腫(endemic goiter)であり,そのほかは散在性(sporadic goiter)である.ヨウ素摂取量の比較的過剰なわが国ではヨウ素欠乏をみることはほとんどない.近年ヨウ素欠乏地域におけるヨウ素付加が甲状腺疾患の頻度にどのような変化をもたらしたか報告されている2). 甲状腺は内分泌器官であり,その主たる働きは取り込んだ無機のヨウ素をサイログロブリンのチロシン残基に付加して有機化したヨウ素化合物を生成し,加水分解の後,甲状腺ホルモンとして分泌することにある.体内に分泌された甲状腺ホルモンの生理活性作用により基礎代謝が制御され,その多寡により病態が形成される.甲状腺から分泌されるT4は末梢組織においてT3に脱ヨウ素化され活性型ホルモンとなり,T3受容体と結合し,さらにretinoid X receptor(RXR)とヘテロ受容体を形成しT3応答領域(T3 responsive element:TRE)に結合して様々な生理作用を発揮する.したがってT4の分泌のみならずT3の生成,あるいは組織における脱ヨウ素酵素の働き,T3受容体の働きもまた甲状腺ホルモン作用に影響し甲状腺機能異常を生じる.甲状腺ホルモンの生成に関与するサイログロブリン,甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO),Na/Iシンポーター(NIS),ペンドリン(PDS),脱ヨウ素酵素(DIO),甲状腺酸化酵素(DUOX)などは遺伝子異常により先天性の機能低下症や甲状腺腫の原因となるばかりでなく,後天性に自己免疫性甲状腺疾患にみられる自己抗体の抗原となりうる. 甲状腺腫は,臨床的にはびまん性と結節性の甲甲状腺疾患の特徴と成因1.① 甲状腺疾患は甲状腺の機能から機能亢進症,機能正常,機能低下症に分類できる.② 甲状腺疾患は臨床症状から甲状腺中毒症,甲状腺機能正常,甲状腺機能低下症に分類できる.③ 甲状腺腫はびまん性と結節性に分類できる.④ 甲状腺疾患は遺伝性,発生学的異常,自己免疫性,炎症性,自律性増殖(腫瘍,過形成),後天性(外傷性など)など病因により分類できる.⑤ 甲状腺疾患の重症度は甲状腺機能に加えて,障害される部位,特に中枢神経系や心血管系の障害の程度に影響される.3.甲状腺疾患の分類と重症度甲状腺の臨床総論Ⅱ〔研修レベルC〕

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