2390ポンぺ病診療ガイドライン2018
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6CQ 1ポンペ病の診断において,病理学的検索は推奨できるか?推奨① 乳児型ポンペ病では筋病理において大半の筋線維に空胞がみられるが,確定診断には,酸性α-グルコシダーゼ(GAA)活性の低下を証明することが必要である.迅速性,侵襲性を鑑み,末梢血を用いアカルボースを添加して行う酵素活性測定をまず行うことが推奨される(1C)② 遅発型ポンペ病では筋病理所見は偽陰性の可能性があることから,診断のための検査として病理学的検査を推奨しない(1C)[背景・目的] ポンペ病の発見は,病理学者のJ. C. Pompeが1932年に,心肥大をきたして死亡した乳児の剖検組織において,著明な空胞を認めたことに端を発する.空胞にグリコーゲンが蓄積している病理組織像が,ポンペ病を象徴するが,臨床像やGAA活性とともに,病理組織像においてもポンペ病は乳児型から遅発型までスペクトラムを形成しており,遅発型ポンペ病の中には,空胞を認めない場合がある. 乳児型ポンペ病の筋病理では多くの筋線維に空胞を認め,筋病理は診断のために有益であるが,ポンペ病の診断は,GAA活性の低下を証明するか,ポンペ病を引き起こす既知の遺伝子変異を両アレルに同定することによって確定される.診断確定のための病理学的検査の位置づけを考慮する必要がある.[解説・エビデンス] ポンペ病の診断における病理学的検索の有効性に関する高いエビデンスを有した報告はない.乳児型ポンペ病では,著明に拡大した酸性ホスファターゼ染色陽性の空胞,すなわちライソゾームがみられ,空胞内には,ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色で紫色に染色される不定型な物質と,periodic acid-Schiff(PAS)染色陽性物質であるグリコーゲンが蓄積する.一方,小児型ポンペ病では,それらの所見は,乳児型ほど顕著ではなく,成人型では典型的な空胞を認めないことが多い1, 2).筋生検を施行した遅発型ポンペ病17例のうち30 %の症例で空胞を認めなかったという報告3, 4)や遅発型ポンペ病38例のうち,組織学的な診断のために,クリニカルクエスチョン(CQ)II

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