II クリニカルクエスチョン(CQ)9CQ 2ポンペ病の診断において,濾紙血のGAA活性測定は有用か?推奨 ポンペ病の診断において濾紙血のGAA活性測定は有用である(1A)[背景・目的] ポンペ病の診断には酸性α-グルコシダーゼ(GAA)活性測定が行われる.従来は白血球,線維芽細胞,筋組織が酵素活性測定用の検体として用いられてきたが,近年では濾紙血検体を用いたGAA活性測定が可能となった.濾紙血のGAA活性測定がポンペ病の診断において有用であるか検討した.[解説・エビデンス] 濾紙血検体を用いたGAA活性測定は,ポンペ病の診断法として,その有用性が報告されている.濾紙血検体は,作製にあたって採血量が少なく侵襲が小さいこと,検体保存が容易で輸送が簡単なことから,特に新生児マススクリーニングやハイリスクスクリーニング検査に用いられている.台湾では,2005年から濾紙血検体を用いたGAA活性測定によるおもに乳児型ポンペ病を対象とした新生児マススクリーニングを開始している.Chienら1)の報告では,132,538名の新生児に対してスクリーニングを実施し,121名(0.091 %)が一次スクリーニング陽性であり,4名がポンペ病と確定診断された.また,偽陰性例は認めなかった.また,Niuら2)のグループは,濾紙血検体を用いて402,281名の新生児マススクリーニングを実施し,321名がスクリーニング陽性と判定され,リンパ球中GAA活性値,GAA遺伝子解析,筋病理所見などから最終的に7名が乳児型ポンペ病,20名が遅発型ポンペ病,294名が偽欠損(酵素活性値が正常対照の10~20 %程度であるが,ポンペ病の症状を呈さない集団)であったと報告している.遅発型ポンペ病のハイリスクスクリーニングはイタリアの多施設共同観察研究で報告されている3).臨床症状のない高クレアチンキナーゼ(CK)血症,診断のつかない近位筋筋力低下のいずれかまたは両方を呈する1,051例について,濾紙血検体のGAA活性測定によるスクリーニングを行い,21例が陽性と判断され,遺伝子解析により17例が遅発型ポンペ病と確定診断された.このように濾紙血検体を用いたGAA活性測定はポンペ病の診断,特にスクリーニングにおいて,その有用性が示されている.一方,韓国,台湾,日本には,酵素活性値が低値であるがポンペ病の症状を呈さない「偽欠損(pseudodeficiency)」と呼ばれる集団が人口の約3~4 %存在する.濾紙血検体を用いたGAA活性測定では,これらの偽欠損とポンペ病患者との鑑別が困難な症例があり,スクリーニングにおいて偽陽性と判定されることがある.Shigetoら4)は,濾紙血検体からヘモグロビンを除去してGAA活性を測定することにより,18名のポンペ病患者群と70名の偽欠損群をすべて鑑別可能としたことを報告している.Odaら5)は,496名の健常者(偽欠損15名)と29名のポンペ病患者の濾紙血検体を対象にGAA活性測定を行い,酵素
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