読み解くためのKeyword25解答第2章 失語症の基礎1 ①書称,②書き取り,③模写,④写字,⑤錯書,⑥失書,⑦形態性錯書,⑧音韻性錯書,⑨意味性錯書,⑩類音性錯書(⑦~⑩は順不同),⑪表層性失書,⑫音韻性失書,⑬深層性失書(⑪~⑬は順不同),⑭表層,⑮深層,⑯音韻書称 「絵や実物など意味的な刺激をうけて,それに対応する文字を書き表すこと」を書称という。書字は,失語症者にとって最もむずかしい言語様式(モダリティ)であるが,そのなかでも書称は,意味的な刺激の理解から語彙や音韻を想起するという段階を要することから他の書字課題に比べ,難易度が高いと考えられる。書き取り 「聴覚刺激をうけて,それに対応する文字を書き表すこと」と書き取りという。書き取りは,音が与えられるぶん,音韻の想起の段階までは書称よりも容易になるため,書称よりも難易度が低いと考える。ただし,聴覚障害や聴覚失認,純粋語聾など入力段階に問題がある場合は,書き取りのほうが困難となる。模写と写字 模写とは「似せて写すこと」で似せて写す対象は限定されていないのに対し,写字は「文字を写すこと」でその対象は“文字”である。つまり,ある患者が「模写が可能である」か「写字が可能である」かには大きな障害メカニズムの違いがある。写字課題を観察する場合には,その結果のみに着目するのではなく,その写字の過程,つまり,書き順や拙劣さなどに着目することが大切である。錯書 書く際に生じる漢字や仮名の誤りの症状を錯書という。錯書には,形態性錯書,音韻性錯書,意味性錯書,類音性錯書などがある。 形態性錯書は,たとえば,「績→積」というように形態的に似かよった文字への書き誤りをさす。また,音韻性錯書は,たとえば,「かえる→かえく」のように,音韻的な障害がベースとなる書き誤りをさす。さらに,意味性錯書は,たとえば,「腕→肘」というように意味的に似かよった文字への書き誤りをさす。類音性錯書は,たとえば「大学→打胃画句」というように,書字した文字が音的には目標語と対応しているものの,意味的にはまったく合わないという書き誤りをさす。失書 書字が選択的に障害された状態を失書という。失書には,表層失書,音韻失書,深層失書などがある。 表層失書は,規則的な表記である仮名単語(例:[たまご])や仮名非語(例:[みじたのけ])の書字成績は良好であるのに対し,非典型的な表記が要求される漢字単語(例:「七夕」)は誤る。高頻度のものは書きやすいといわれており,誤りパターンは,同音異義語(例:七夕→田名場田)などが認められる。表層失書は,流暢性失語に多い。 深層失書は,非語(例:「みじのたけ」など)の書字が困難で,実在語の書字の際にも意味性錯書(例:馬→牛)が認められるが,非語よりも実在語のほうが成績はよい。 音韻失書は,実在語(例:たまご,卵)の書字成績は良好であるが,非語(例:みじのたけ)の書字は困難を示す。
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