101column 3 SPIRINT研究が発表されて,厳格な降圧の有用性が指摘されるようになった.本テーマであるJSH2019のCQ3においては,厳格治療と通常治療を比較したランダム化比較試験(RCT)についてメタ解析を行い,厳格治療が通常治療に比較してより予後改善が見られるかを検討している.本内容は,Sakima A, et al.:Optimal blood pressure targets for patients withhypertension:a systematic review and meta‒analysis. Hypertens Res 2019;42:483‒495に記載されている. 論文の選択では,降圧目標の評価を目的としたランダム化比較試験(RCT)について,PubMed,Cochrane Library,医中誌の検索,システマティックレビュー・メタ解析論文やそれらからの参考文献のハンドサーチによる検索を行った.厳格治療群と通常治療群をベースラインからの降圧で比較し,かつ6か月以上の追跡期間を有するRCTの19論文(合計55,529例)を解析採用とした.RCTの対象患者は,糖尿病,腎疾患,ラクナ梗塞などを含む高リスクの高血圧患者が多い.これは,RCTで有意な結果を導くためには,絶対リスク減少が多く得られる可能性がある高リスク患者を対象とする場合が多いからである.維持透析患者,脳卒中急性期,小児を対象としたRCTは解析から除外した.厳格治療群および通常治療群の降圧目標は各RCTに準拠して解析している.アウトカムは,複合脳心血管イベント(致死性/非致死性心筋梗塞,致死性/非致死性脳卒中,致死性/非致死性心不全,心血管死,急性冠症候群,閉塞性動脈疾患,大動脈瘤を含む),全死亡,致死性/非致死性心筋梗塞,致死性/非致死性脳卒中,および有害事象とした.1 複合脳心血管イベントについて 到達血圧平均が131.4/76.5 mmHgの厳格治療群は,140.3/80.7 mmHgの通常治療群と比較して複合脳心血管イベントのリスクが有意に低値だった(14試験).厳格治療群の降圧目標が収縮期血圧(SBP)130 mmHg未満のRCTでも,到達血圧の平均が127.5/75.8 mmHgの厳格治療群は,136.7/80.2 mmHgの通常治療群より複合脳心血管イベントのリスクが有意に低値だった(9試験).2 全死亡について 到達血圧の平均が130.5/77.1 mmHgの厳格治療群と138.8/81.5 mmHgの通常治療群の全死亡の発生に群間差はなかった(19試験).厳格治療群の降圧目標がSBP 130 mmHg未満のサブグループでも,到達血圧の平均が127.3/76.5 mmHgの厳格治療群と135.9/81.0 mmHgの通常治療群で全死亡のリスクに差がなかった(13試験).3 致死性/非致死性心筋梗塞 到達血圧の平均が132.8/76.5 mmHgの厳格治療群は,141.6/80.4 mmHgの通常治療群と比較して心筋梗塞のリスクが有意に低値だった(12試験).厳格治療群の降圧目標がSBP 130 mmHg未満のサブグループでも,到達血圧の平均が128.8/75.5 mmHgの厳格治療群と137.9/79.4 mmHgの通常治療群の心筋梗塞のリスクに差はなかった(7試験).4 致死性/非致死性脳卒中 到達血圧の平均が132.4/76.7 mmHgの厳格治療群は,141.5/80.8 mmHgの通常治療群と比較して脳卒中のリスクが有意に低値だった(13試験).厳格治療群の降圧目標がSBP 130 mmHg未満のサブグループでも,到達血圧の平均が128.7/75.9 mmHgの厳格治療群は138.3/80.2 mmHgの通常治療群より脳卒中のリスクが有意に低かった(8試験).5 有害事象 到達血圧の平均が129.4/74.7 mmHgの厳格治療群は138.2/77.4 mmHgの通常治療群と比較して有害事象のリスクが高い傾向があったが有意差はなかった(7試験).厳格治療群の降圧目標がSBP 130 mmHg未満のサブグループでも同様に,到達血圧降圧治療において,厳格治療は通常治療と比較して脳心血管イベントおよび死亡を改善するか?column3
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