2402高血圧診療ステップアップ
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102column 3の平均が126.7/74.6 mmHgの厳格治療群では,135.9/77.5 mmHgの通常治療群に比べて有害事象のリスクは高い傾向にあったが,有意差はなかった(5試験). まとめると,高リスク患者を対象としたRCTが主体である今回のメタ解析では,通常治療に比べ厳格な降圧で,有害事象を増加させることなく,複合脳心血管イベント,致死性/非致死性心筋梗塞および致死性/非致死性脳卒中のリスクが有意に低値だった.また,目標降圧値とアウトカムの関係について検討したサブ解析では,130/80 mmHg未満への厳格治療は複合脳心血管イベントおよび致死性/非致死性脳卒中のリスクを有害事象を増加させることなく,有意に低下させていた. したがって,このような検討から,JSH2019では高リスク患者においては130/80 mmHg未満を目指すことが推奨されている.一方,低・中等リスク患者においても,降圧による相対リスクの低下は患者のもつリスクによらず同等であるとのエビデンスを考慮して,130/80 mmHgを目指すことを原則としている.しかし,低・中等リスクの場合は,医療経済的な側面や副作用を避ける意味からも,降圧薬ありきではなく,まずは生活習慣の修正を中心に治療を行うことが必要である.一方,副作用出現の可能性の高い患者〔後期高齢者(75歳以上),両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞がある,または未評価の脳血管障害,蛋白尿のない慢性腎臓病(CKD)〕や厳格降圧のエビデンスが十分でない非弁膜症性心房細動を有する患者では,降圧目標として140/90 mmHg未満が推奨されている.[JSH2019CQ3参照]

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