151B 心疾患次予防に関するガイドラインでは,RA系阻害薬としてはCE阻害薬が推奨され,ARBはACE阻害薬に対する忍容性がない場合に限られている5,6).RA系阻害薬やβ遮断薬は血行動態が安定していれば,できるだけ早期からの投与が望ましいが,低心機能症例では少量から投与しはじめ注意深く徐々に増量する.また,心筋梗塞後の左室駆出率低下例において,RA系阻害薬,β遮断薬,利尿薬にMR拮抗薬を追加投与すると予後がさらに改善される.これらの薬剤の最大忍容量により高血圧コントロールが不十分な場合には長時間作用型Ca拮抗薬を追加する.急性冠症候群(急性心筋梗塞,不安定狭心症) 冠動脈粥腫の破綻や粥腫内出血,内皮びらんに伴う局所性血栓形成によって,冠動脈が完全閉塞をきたし急性心筋虚血とそれに引き続く心機能不全をきたしたものが急性心筋梗塞(ST上昇型,ST非上昇型),不完全閉塞をきたし心筋壊死を伴わない一過性急性虚血をきたしたものが不安定狭心症である.両者の発症病態が同一であることから臨床的には急性冠症候群として対処される.急性冠症候群の治療の基本は,責任冠動脈の速やかな再疎通である.したがって,急性冠症候群が疑われる場合には可能な限り速やかにPCI施行可能な施設に収容する.特にST上昇型心筋梗塞やショックを合併している例はただちに緊急PCIなど冠血行再建術を行うことが望ましい17,18).高血圧を伴う場合は高血圧緊急症として,投与量の微調節が容易な硝酸薬・Ca拮抗薬などの持続点滴で,収縮期血圧140 mmHg未満を目標に降圧する(表3). 急性冠症候群が疑われた場合,ただちに診断の確定と治療を同時に開始する.1回の心電図・血液生化学検査(白血球,H‒FABP,トロポニンT[TnT],トロポニンI[TnI],CK,CK‒MBなどの心筋障害マーカー)で診断がつかない場合には,15~30分おきに心電図をとり経時的変化を確認する17,18).H‒FABPは発症後1時間以上,TnT,TnIは3時間以上経過しないと検出されないこともあるので,発症後6時間以内の測定で生化学マーカーが陰性のときも発症6~12時間後に再度測定する. 急性冠症候群が疑われる患者の初期治療としては,まず酸素投与,禁忌がなければアスピリン162~325 mgを速やかに噛み砕いて内服させ,ヘパリン静脈内投与(15,000~30,000単位/日;APTT 1.5~2.5倍を目標)を開始する17,18).心筋虚血症状・所見が持続する場合には硝酸薬の舌下または口腔内噴霧を行い(3回まで)引き続き,経静脈的に硝酸薬を持続投与する(表3).さらに胸痛が持続する場合は,禁忌がなければ,β遮断薬を静脈内投与し(胸痛が持続していなければ経口投与),安静時の心拍数70/分未満を目標に管理する.冠攣縮性狭心症,あるいは硝酸薬とβ遮断薬が禁忌,または硝酸薬とβ遮断薬を十分量投与しているにもかかわらず虚血が持続したり発作を頻回に繰り返す場合には,非ジヒドロピリジン系のCa拮抗薬を投与する.さらに症状が持続する場合にはニコランジルの静脈内投与を追加する.心不全4 心不全は,いったん症状が出現すると,突然死の危険を抱えながら,寛解増悪を繰り返し死にいたる進行性かつ予後不良なあらゆる心疾患の終末像である(図2)19).心不全症状や器質的心疾患がなくとも高血圧や糖尿病などの危険因子のみを有するステージAや,器質的心臓異常は認めるが心不全症状のないステージBから,早期治療介入し心不全発症を予防することが重要である. 近年,急速に増加する心不全は,脳卒中と冠動脈疾患と並び,高血圧性臓器障害として重要性が増している.高血圧は心不全の基礎疾患として,冠動脈疾患と並び最も頻度が高い.また,高血圧はすべてのステージにおける増悪因子であり(図1),慢性心不全の急性増悪の誘因ともなる.高血圧の心不全一次予防に関しては,SPRINTやALL-HAT心不全二次解析などによりサイアザイド系利尿薬を中心とした降圧療法の有用性が示されている20,21).慢性心不全(1) 左室駆出率の低下した心不全(heart failure with reduced ejection fraction:HFrEF) HFrEF(左室駆出率40%未満)ではポンプ不全とba
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