2404ベーチェット病診療ガイドライン 2020
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1 背景・目的ベーチェット病は全身の諸臓器に急性の炎症を繰り返す難治性炎症性疾患である.2014年のベーチェット病医療受給者証所持者数は20,035件に達する.ベーチェット病では特異的な検査所見がなく,症状の組み合わせから診断がなされており,本病診療の専門医師においても診断に苦慮することは少なくない.ベーチェット病は症状が全身の多臓器にわたっているため,多くの診療科での患者データを統合して診断する必要がある.しかしながら,自身の診療科とは異なる他科の診療科の診察内容に関しては十分に理解していないことも多く,診療科を越えた横断的な所見理解の共有が必要とされていた.そこで,国内でのベーチェット病の診療レベルの向上に寄与するために,多くの診療科にまたがる多数の本病専門医師が招集され,本病の体系的な疾患概念の確立,疫学統計,また臨床症状,治療法やその効果などに関する臨床実態調査および文献的な科学的根拠の検索を行い,エビデンスに基づいた「診療ガイドライン」の作成をすることとなった.本ガイドライン作成は,厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)の「ベーチェット病に関する調査研究」の一環として行われたが,腸管病変に関しては「難治性炎症性腸管障害調査研究」との共同プロジェクトとして行われた.2 ガイドラインの特徴本ガイドラインは,Minds診療ガイドラインに準拠し,診療上重要度の高い医療行為について,エビデンスに基づく医療を,益と害のバランスを考慮して,患者と医療者の意思決定を支援するために最適と考える推奨を提示することを目的とした.各項目についてクリニカルクエスチョン(CQ)形式で作成し,一般臨床医が現場ですぐに理解し実践できる実用性の高いガイドラインの完成と,その後の普及を目指して作成した.ベーチェット病診療が専門ではない一般の医師向けに作成し,自身の診療科以外の領域も理解できるように努めた.また,本病で用いる生物学的製剤(TNF阻害薬)に関する治療指針や注意事項に関して,先行する他疾患のガイドラインに記載されているものも多いが,それらの内容に関しても重要なものは本ガイドラインでふれて,他のいろいろなガイドラインを見ないで済むようなall in oneのガイドラインを目指した.そして,すべてのベーチェット病患者が同様に適切な診療を受けられるような標準化医療のバイブルとなるガイドラインを目指して作成した.海外のガイドラインも参考にし,海外の臨床研究者とも連携をとり,国際的にも協調性のあるガイドラインを心がけた.本ガイドラインは,このようなコンセプトのもと,ベーチェット病診療のエキスパートが,臨床実態調査および文献的な科学的根拠の検索を行い,エビデンスに基づいて作成したものである.しかしながら,ベーチェット病においては,患者数が少なく,炎症の強さや組織傷害の不可逆性からランダム化比較試験(randomized controlled trail:RCT)や前向きコホート研究などエビデンスレベルの高い臨床試験が困難であり,十分な臨床データの蓄積やエビデンスレベルの高い科学的根拠(臨床試験や学術論文)が得られているとはいえない.したがって,本ガイドラインではシステマティックレビューは行わず,本分科会の専門医師による推奨への同意度を集計・評価し,エビデンスレベルの低い科学的根拠を補うこととした.本ガイドラインは,厚生労働省難治性疾患政策研究事業の「ベーチェット病に関する調査研究」および「難治性炎症性腸管障害調査研究」の共同プロジェクトとして作成されたものであるが,日本リウマチ学会,日本皮膚科学会,日本眼科学会など日本医学会分科会の関連学会の承認を得て,両研究班の共著とし第章 1ガイドライン作成にあたって2

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