2409高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版 ダイジェスト・ポケット版
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 血清尿酸値は,尿酸の産生量(尿酸への代謝量)と腎臓や腸管からの尿酸排泄能のバランスにより規定されている.高尿酸血症は,このバランスが崩れ体内の尿酸プールが増大する方向に働いたときに起こり,機序により病型として分類されている.尿酸動態 ヒトの体内尿酸プールは,成人男性でおよそ1,200mg,成人女性ではおよそ600mgである.食事由来のプリン体摂取,生体内のプリン体合成や細胞の崩壊の結果,1日あたり700〜800mgの尿酸が尿酸プールに入ってくるが,ほぼ同量が体外に排泄される.尿酸の約2/3は腎臓から,残りのほとんどは腸管から排泄される.腎臓において,尿酸は糸球体で濾過されたあと,尿細管上皮細胞の尿酸トランスポーターを介して再吸収と分泌が行われ,最終的には糸球体で濾過された尿酸の7〜10%が尿中に排泄される.したがって,尿酸の産生が増加した場合や尿酸の排泄が低下した場合は,尿酸プールが増大し高尿酸血症をきたす.高尿酸血症の病型分類 高尿酸血症は尿酸排泄低下型,腎負荷型(尿酸産生過剰型と腎外排泄低下型)そして両者の特徴をもつ混合型に分類される(図1).高尿酸血症のなかで,尿酸排泄低下型が約60%,混合型が約30%,腎負荷型が約10%であり,排泄低下型の特徴をもった高尿酸血症が大多数を占めている.腎臓からの尿酸排泄能の低下を示す尿酸排泄低下型は,CUAまたはCUA/CCrの低値により判定する(表1).腎負荷型は,尿中への尿酸排泄量が増加していることにより判定する(表1).近年,トランスポーターABCG2が腎臓や腸管からの尿酸排泄に関与し,ABCG2の機能低下により尿酸の腸管排泄が減少する結果,腎臓からの尿酸排泄が増加しやすくなることが明らかになった.このような尿酸の腸管排泄減少による高尿酸血症は,腎外排泄低下型高尿酸血症として病型分類に新たに追加され,検査においては腎負荷型の所見を示す(図1).現時点では,ABCG2遺伝子の機能低下型一塩基多型などからABCG2122高尿酸血症の病型分類診断B要 点 ▶高尿酸血症の病型分類は,尿中への尿酸排泄能と尿中尿酸排泄量により行われる.▶尿酸排泄能の指標として,尿酸クリアランスと尿酸分画比(尿酸クリアランス/クレアチニンクリアランス比)が用いられる.▶尿酸排泄低下型高尿酸血症,腎負荷型(尿酸産生過剰型と腎外排泄低下型)高尿酸血症,混合型高尿酸血症に大別される.▶病型の形成には,遺伝要因と環境要因の両方が関与している.35第3章 B 診断

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