2417てんかん専門医ガイドブック 改訂第2版
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206Ⅰ 総論 てんかんは多彩な病像をもつ慢性神経疾患である.薬剤調整による発作抑制率が70%程度であるという観点からは,てんかんは難病中の難病である(難病制度に該当しないのは患者数50,000人以下の稀少疾患ではないからである).慢性疾患という観点からは,てんかんのある人は人生の長い時間てんかんと対峙しなければならない.てんかん治療の現場では,疾患治療と同時に諸問題(精神症状・就学就労を含めた社会適応・妊娠出産・スティグマとの戦い,など)に対応すべく,精神・神経疾患の総合的問題解決対応が求められている.諸問題は個別化・多様化しており,多職種(各診療科医師・看護師・精神保健福祉士・医療社会福祉士など)を連携投入した総力戦でないと解決できない事例が多い.神経疾患でこれほどの多方面解決を求められる領域はない. すべての機能を有する単一施設を構築するのは容易ではなく地域連携構築による解決が求められる.本稿に示す地域連携拠点を核としたてんかん医療連携は第七次医療計画に則っており,今後とも連携拠点整備が進むものと予測される. 2015年度より厚生労働省モデル事業として「てんかん診療拠点病院整備事業」が開始された(図1).各三次医療圏に1つ以上の拠点病院を設置する制度である.そもそも精神科領域では2013年の精神保健福祉法改正を受け,2016年1月に「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」が立ち上がり医療保護入院手続きのあり方が議論されるなかで,2017年2月には「三次医療圏には多様な精神疾患等ごとに対応できる拠点となる医療機関が1つ以上あることが医療機能明確化の望ましいイメージである」との検討会報告が提出された.これまでてんかんは精神疾患等として行政上の整理がなされており,てんかん拠点病院制度は本報告の流れを受けたものである.2015年のWHO決議1)により「てんかん患者の権利を促進,保護する政策や法律を,各国政府が策定,強化,導入する必要性」ならびに「この疾患がもたらす負担をより明確にし,治療へのアクセスがどの程度改善しているかを測るために,健康に関する情報,ならびに調査システムを強化する必要がある点」が強調されている.本決議に至る共同提議国である日本も決議に倣った施策をすすめる必然性がある.2018年からの5年間にわたる第七次医療計画(医政発0331第57号2017年3月31日)には,てんかんに対応できる(1)医療機関の明確化,(2)専門職の養成,(3)多職種連携の推進,(4)1てんかん地域診療連携拠点制度第5章 てんかんの治療①職種,専門医,診療科,施設間の連携1. てんかん診療地域拠点(拠点病院)制度整備が進行している.てんかん拠点病院は都道府県により指定される.てんかん拠点病院の創設や運用には行政との密な連携が求められる.2. てんかん拠点病院制度は三次医療圏内てんかん医療の均てん化が目的である.圏内一極集中を回避するには地域ごとの取り組みが必要である.3. てんかん診療支援コーディネーターという新しい職域が力量を発揮しているが,てんかん診療支援コーディネーターの数を増やすことが課題である.4. てんかん診療支援医制度の創設が検討されている.てんかん診療の裾野をひろげる機運が高まっている.ポイント10.医療連携・体制・社会生活

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