2417てんかん専門医ガイドブック 改訂第2版
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207第5章 てんかんの治療第5章てんかんの治療多施設連携の推進,などが記載されている. 医療計画となれば本来,すべての都道府県は基本方針に則してかつ地域の実情に応じて医療計画を定めることになり,すべての都道府県に支給される一括交付金が事業財源として充当される.しかし各地で地域連携が進んでいないまま一括交付金配分を行うと十分な使途検討がなされないまま配分が都道府県に委ねられることにもなりかねず,現場で求められる医療レベルまでの底上げが達成されないというリスクがある.そこでモデル事業は2018年に本事業へと移行された.各地域拠点整備を推進する一方ですべての都道府県における拠点病院整備を急ぎ,医療計画にキャッチアップする必要がある,との立法府と行政の検討過程があったと推察される.地域連携拠点制度推進による医療連携はわれわれてんかん医療を推進するものに与えられた課題であると理解できる. 制度開始当時の整備事業要件を引用すると「てんかんの地域診療連携体制を整備することを目的として,てんかんの治療を専門的に行っている医療機関のうち,5箇所程度を「てんかん診療拠点期間」として指定し,関係機関(医療機関,自治体など)との連携・調整などを実施し,てんかんについてのより専門的な知見を集積するとともに支援体制モデルの確立を行う」とされた.てんかん診療拠点機関施設要件は(1)てんかん専門医(または同等の医師)がいること,(2)脳波およびMRIや発作時ビデオ脳波モニタリングによる診断が行えること,(3)てんかんの外科治療や,複数の診療科による集学的治療を行えること,と規定された.これがわが国てんかん診療拠点病院の原案である.施設要件にあるてんかん専門医と同等の医師とは,神経系専門医(日本神経学会専門医・日本小児神経学会専門医・日本精神神経学会専門医・日本脳神経外科学会専門医)である. 初年度には8箇所の「てんかん診療拠点病院」が各三次医療圏(宮城・栃木・新潟・神奈川・静岡・岡山・広島・鳥取)に設置され,事業が開始した.補助事業予算は国と地方自治体が半々で拠出する.都道府県は国と協議したうえで都道府県が拠点病院を指定していたが,最近では都道府県が独自に指定したうえで国から許可を得るというスタイルに変化しつつある. 拠点病院が都道府県により指定されるという点は,行政主導の連携に制度を生かして多職種連携を落とし込める点でも重要である.拠点病院には諮問機関として運営協議会が設置される.協議会構成は各地域の実態に併せて構成することができる.神奈川県の例(表1)では協議会議長は拠点病院から選出しており,協議会構成は専門医師だけでなく,行政・患者団体・神奈川労働局(厚生労働省の出先機関である)・保健所・医師会・てんかん診療支援コーディネーターなどから構成されていることがわかる.拠点病院と神奈川県が事務局を共同運営する形式である.拠点病院に所属するてんかん診療支援コーディネーターを協議会会員とすることは県からの要望である.会議体としての協議会は年2回程度開催され,専門職教育セミナー・市民公開講座を併図1 てんかん診療拠点機関のイメージグラフ病院(総合病院,精神科病院等)診療所(神経内科,脳神経外科,精神科等)その他かかりつけ医精神保健福祉センター保健所てんかんネットワークてんかんネットワークてんかん診療拠点機関助言・指導患者紹介・受入情報提供・連携情報提供・連携

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