2417てんかん専門医ガイドブック 改訂第2版
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266Ⅱ 各論 Landau‒Kleffner症候群(LKS)は,小児期に発症する後天性(獲得性)てんかん性失語(acquired epileptic aphasia)とてんかんを主症状とし,てんかん性異常脳波,認知障害,行動異常を伴う症候群である.William LandauとFrank Kleffnerによって1957年に報告されて以来,多くの症例が報告されているが,小児てんかんのなかでの頻度は0.2%から1%とまれな症候群である.有病率は5~19歳で30~40万人に1人と推定されている.1989年のてんかん症候群分類では,焦点性か全般性か決定できないそのほかのてんかんに位置づけられていたが,2017年てんかん分類では,てんかん性脳症に位置づけられる.言語発達が正常な小児に発症し,脳波で徐波睡眠時に持続性棘徐波複合を伴う後天性失語・聴覚失認で,70~80%はてんかん発作を示す.てんかん発作は,非定型欠神発作,脱力発作,焦点運動起始発作,焦点起始両側強直間代発作を示す.てんかんや脳波異常は抗てんかん薬(AED)やステロイドで比較的容易に消失するが,言語症状は長期にわたって改善せず,一部は高度の中枢性の言語聴覚障害とそれに起因する後遺症を残すことがある.言語機能が正常化するのは20~30%といわれている.発症年齢が小さく,electrical status epilepticus during sleep(ESES)あるいは睡眠時持続性棘徐波(CSWS)の脳波所見の改善がみられない例では言語障害,認知障害が残りやすいと報告されている.本態は聴覚領である側頭葉Heschl回付近を責任病巣とする聴覚失認と考えられている. 後天性失語,脳波でCSWS,焦点性ないし全般性てんかん発作と認知障害,行動異常が診断の手がかりとなる.聴力検査,聴性脳幹反応,頭部画像検査では明らかな異常所見が認められないことが多い.家族性はなく,発症年齢は3~10歳で,特に5~7歳にピークがある.男女比は2:1である.進行すれば後天性失語,聴覚失認,語聾となる.約70~80%はてんかん発作を認めるが,てんかん発作の有無にかかわらず,脳波で徐波睡眠時に持続性棘徐波複合または極めて頻発する両側性広汎性棘徐波を示せば本症を考える. 初発症状は言語障害が多いが,てんかん発作ではじまることもある.てんかん発作は約70~80%に認められ,発作型は焦点運動起始発作,ミオクロニー1概念2診断の手がかり3臨床経過第2章 小児てんかん4Landau‒Kleffner症候群(Acquired epileptic aphasia:後天性てんかん性失語)1. Landau‒Kleffner症候群(LKS)は,小児期に発症する後天性失語とてんかんを主症状とし,認知障害,行動異常を伴う症候群である.2. 失語の原因は言語性聴覚失認で,聴力は正常だが音のもつ言語としての意味が認識できない.3. 脳波異常は覚醒時には前頭部や側頭部に異常波を認めるが,睡眠時持続性棘徐波(CSWS)を伴うことからelectrical status epilepticus during sleep(ESES)あるいはCSWSを示すてんかん性脳症と類縁状態と考えられている.4. てんかん発作や脳波異常は抗てんかん薬により改善するが,発症年齢が小さく,ESES,CSWSの脳波所見の改善がみられない例では言語障害,認知障害が残りやすい.ポイント

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