1 質量分析の基礎3質量分析の基礎1イオンまたは分子の質量をノミナル質量という.各元素をそれぞれ存在比最大の同位体とした同位体組成での質量数に一致する.C=12,H=1,N=14,O=16などである.□12C=12.000000 uを基準とした各原子の計算精密質量は整数ではなく実際には小数点以下に端数をもっている.たとえば,1H=1.007825,14N=14.003074,16O=15.994915などである.□分子量1,000以下の試料の分子量には,モノアイソトピック質量,またはノミナル質量がよく用いられるが,分子量1,000以上の高分子では平均質量が一般的に用いられる.□モノアイソトピック質量とは,12C=12.000000,1H=1.007825,14N=14.003074,16O=15.994915など分子を構成する各元素の天然で存在比率が高い代表同位体の精密質量から計算した質量をいう.□平均質量とは,C=12.0111,H=1.007947,N=14.006747,O=15.99943などの相対原子質量から求めた質量である.□相対原子質量とは,その元素の同位体の質量に,天然に存在する安定同位体の存在比を考慮して求めた平均値である.□試料のイオン化により生成したイオンを電場や磁場によりm/zに基づいて分離し,それぞれを検出することで,m/zを横軸,そのイオン強度を縦軸とするマススペクトルが得られる(図2).イオン強度は,絶対量(個数,存在量)で表すこともあるが,通常は相対強度(%)として表記する.□マススペクトルにみられるイオンピークのうちで,各イオンピークの相対強度を求める際に基準に用いるピークをベースピークといい,ある質量範囲でイオン量が最も多いピークが選ばれる.□他のイオンピークはベースピークのイオン量を100%とした相対強度(%)で示す.□試料分子は各々固有のマススペクトルを示すことから,試料の構造解析に用いられる.□分子量の情報を得ることができるイオンを分子量関連イオンという.□分子量関連イオンには,分子内の結合が切れることがなく電子が取り去られるかあるいは付加されることによって生成した分子イオン(M+・またはM-・)(図3),さらにプロトン付加分子[M+H]+,マススペクトル100(%)5000500m/z1,0001,500ベースピークフラグメントイオン分子イオン相対強度図2マススペクトルの例
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