1 質量分析の基礎5質量分析の基礎1□質量分解能の算出には10%谷法と半値幅(full width at half maximum:FWHM)法がある.10%谷法は磁場型で用いられ,半値幅法は飛行時間型,四重極,イオントラップなど磁場型以外の装置で用いられる(図5).□10%谷法では,たとえば,m/z 400.00とm/z 400.08の2本のピークの重なりがピーク高さの10%になるように分離されたとき,分解能は400/0.08,すなわち5,000と算出される.□半値幅法による分解能の値は10%谷法の値の約2倍となる.□高分解能質量分析計(分解能10,000以上)によりイオンの精密質量が測定でき,その元素組成を推定することができる.□高分解能質量分析はフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計,磁場型の二重収束質量分析計,リフレクトロン飛行時間型質量分析計などによって行われる.□タンデム質量分析(tandem mass spectrometry,mass spectrometry/mass spectrometry:MS/MS)はある特定のm/zをもつプリカーサーイオンのみを第一の質量分析部MS1で選択し,そのプリカーサーイオンの分解により生成するプロダクトイオンを第二の質量分析部MS2で分離し検出する方法をいう(図6).□MS/MSを行う装置をタンデム質量分析計という.□2つ以上の質量分析部を備えた空間的MS/MSのほかに,イオントラップなどを用いる時間的MS/MSもある.□プリカーサーイオンの分解のために,MS1とMS2の間に衝突室をおき不活性ガス分子と衝突させる衝突誘起解離(collision‒induced dissociation:CID),飛行時間型質量分析計ではポストソース分解(post‒source decay:PSD)が用いられる.□MS/MSにより,ある特定のm/zをもつプリカーサーイオンから生成したすべてのプロダクトイオタンデム質量分析50%100%m/zΔ(m/z)質量分解能=m/z/Δ(m/z)半値幅法100%10%m/zΔ(m/z)10%谷法図510%谷法と半値幅(FWHM)法による質量分解能10%谷法による質量分解能はピーク強度の10%部分のピーク幅を用いたm/z/Δ(m/z)とする.半値幅法による質量分解能はピーク強度の50%部分のピーク幅を用いたm/z/Δ(m/z)とする.
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