4多職種でトータルケアの共有を 摂食嚥下障害への対応においては,障害だけに注目していてはよい結果を得ることはできません.総合的にみることが重要であり,それには基礎疾患,全身状態(特に呼吸・循環など),栄養,行動,社会性,親子関係など,全体を理解したうえでの対応が大切です.すなわち,摂食嚥下障害に関わる人すべてが,トータルケアの基本的な考えについて共通の認識を持つ必要があります.そのためには子どもの生活や基礎疾患も含めた治療全体の中に,摂食嚥下障害の支援を組み込む必要があります(p.2ポイント1図1参照).何が摂食嚥下障害に最も影響を及ぼしているのか 子どもが食べないことで来院した場合は,摂食嚥下障害と考えて対応しますが,食べられない理由は多岐にわたります.“食べられない”という問題の原因は,直接の摂食嚥下機能の障害だけではありません.食べる機能ばかりに注目して相談に乗れません. 例えば,基礎疾患が重大なときはまずその疾患への対応が必要であり,今は摂食嚥下障害に対応する時期でないと判断する必要があります.それは,摂食嚥下障害への支援が必要ないという意味ではありません.食べる機能ばかりでなく,発育全体,子どもの病気など,すべてを見わたす必要があるということです.それぞれの子どもにおいて,摂食嚥下障害がどのような位置にあるのかを把握しないと対応の方向性を誤ります.基礎疾患の治療と摂食嚥下障害を切り離さない 摂食嚥下障害がある場合の多くは基礎疾患があり,それが障害に関与しています.摂食嚥下障害は疾患名ではなく,基礎疾患に合併する症状や状況を表す言葉です. 基礎疾患が重要であるにもかかわらず,主治医(小児科医)が摂食嚥下機能療法を担当者に依頼するだけになり,主治医と摂食嚥下障害の関わりが薄くなってしまうという誤った方向にいくこともあります. 主治医の関わりはトータルケアにおいて重要であり,呼吸障害や栄養・誤嚥などの問題の対応においては,特に主治医との連携が重要です(p.176 Column⑮ 参照).2ポイントトータルケアで大切なことを 覚えておこう 障害だけをみることにならないように注意する. 何が摂食嚥下障害に最も影響を及ぼしているのかを把握する. 発育(成長・発達)の評価,および栄養評価は必須である. 基礎疾患の経過予後を含めた摂食嚥下機能の評価が大切である.Essence
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