5Aトータルケアの考え方摂食嚥下障害はすべて複合的要因からなる 摂食嚥下障害には基礎疾患があるため,そのことを理解したうえで対応する必要があります.そして摂食嚥下障害は複合的要因からなり,摂食嚥下障害への対応では常に総合的にみる必要があります.摂食嚥下障害の一面だけを見て全体を見わたさないと,適切な支援は難しくなります. 内科的には,呼吸器,循環器,感染症,栄養,神経,精神など,さまざまなことが関わります.外科疾患では,摂食嚥下障害は小児外科疾患に伴うこともあり(p.136 Column⑫ 参照),耳鼻咽喉科的・口腔外科的基礎疾患と関連します.簡単にいかないのが,小児期の摂食嚥下障害といえます.子どもの行動と生活をしっかりみるトータルケアの重要性 子どものケアにあたっては摂食嚥下障害に対する知識だけでは不十分です.育児,小児保健,発育(成長・発達),さらには療育,教育などに関する知識も必要となります.そのうえで摂食嚥下障害への支援を行う必要があります. 摂食嚥下障害について習熟していても,マニュアル通りにいかないことはいくらでも経験します.そのようなときにも,私たちは摂食嚥下障害がある子どもたちに何をするべきか,しっかり見据えていることが大切です.それは,子どもたちの背景,すなわち子どもの生活全般をみていくことです.家族が果たす役割の重要性はいうまでもありませんが,そのようなことも含めて対応する必要があります.摂食嚥下機能を通して,子どもの行動全体,あるいは生活をみることが重要であり,食べることの意味をしっかり考える必要があります(表1). 表1 生体にとって食べることとは◦欲求満足:食欲,楽しみ,社会性・コミュニケーションなど◦生命維持:栄養,成長・発達,健康◦生体防御(安全):誤嚥,危険物(中毒,腐敗)など
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