160F トータルケアとしての摂食嚥下障害の対応子どもの特性や機能に合わせてうまく組み入れ,能力を引き出すようにします. 子どもが嫌がるような摂食“訓練”は不適切であり,いかに食べることを楽しめるかを考えた対応が必要です.泣きながら頑張って食べても,次のステップにつながりません.楽しんで食べることが,脳の活性化にもつながり,本人の意欲と機能を最大限に活かします.これは食行動を引き出すことであり,乳幼児期の摂食嚥下機能の向上に最も重要なことです. 最終目標は,上手に食べさせることではなく,楽しく意欲的に子どもが食事をしてくれることです(図1).子どもが食事をしているときに安心して楽しく食に向き合えているか,苦痛な時間がまた来たと考えているか,子どもは表情で示してくれます.先入観を持たずに子どもの行動をしっかりと観察することが大切です.そのなかで,正常発達,障害の評価,支援計画を考えます. 正常発達と同じ過程で進むわけではありませんが,正常発達と比較することは,その評価につながり,支援計画において正常発達の過程から取り入れられるアイデアも多いといえます.例えば,自分たちがおいしいと感じる食形態は何か,どのように食べたら楽しいかということから子どもへの支援を見直すことができます.おいしく食べられないとき 摂食嚥下障害の理由の1つとしておいしく食べられないことが考えられます.風邪などによる体調不良で食べられないことはよくあることで,一時的なことであれば体調の回復とともに食欲は改善します. しかし,嚥下障害が重度で誤嚥を回避することが難しければ,食べることが楽しくなくなってしまいます.それは,食べるたびにむせて苦しいようなとき,あるいはむせなくても誤嚥性肺炎で入院が必要になるようなときです. 摂食嚥下障害が治療や対応によって改善が期待されればその改善が目標になります.しかしながら,食べることが楽しいということにつながらなければ,経口摂取での食事を回避し,胃ろうからの注入によって栄養補給を行うことが選択肢となります.その中には一口あるいは少量なら味や匂いを楽しめる人もいます.また食事以外の楽しみを含めて,子どものQOLの向上を図るべきです. 図1 食べる機能の促進のためにペースト(均質・刺激が少ない)色々な食形態へ(さまざまな食感,口腔の刺激)自立(自由な食べ方,自分で食べる)楽しく食べることは乳児期から始める介助(上手に食べさせてもらう)
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