2422小児泌尿器科学
11/14

16318 尿管瘤する.②有症状例ⅰ)上腎が無機能で,VURを認めない場合: 上腎摘出術を行う.上腎尿管結紮術は保険未収載である.ⅱ)上腎が無機能で,高度VURを合併する場合: TUP,Total reconstruction(上腎摘出術+VUR防止術),尿管瘤切除術+common sheath reimplanta-tionから手術法を選択する.この場合のTUPはドレナージを行うことにより尿路感染症を予防し,また,尿管径を細くして,のちの根治術を行いやすくすることが目的となる.ⅲ)上腎が無機能で,軽度VURを合併する場合: VURが問題にならないあるいは自然消失すると考えて,VURを認めない場合と同様に上腎摘出術を行うか,あるいは高度のVURを有する場合と同様に,TUP,Total reconstruction,尿管瘤切除術+common sheath reimplantationから手術法を選択する.ⅳ)上腎機能を認め,VURを合併しない場合: TUP,上腹部アプローチによる尿管尿管(腎盂)吻合術,膀胱外アプローチによる尿管尿管吻合術(尿管瘤切除術+下腎尿管膀胱吻合術を併施する場合あり),尿管瘤切除術+common sheath reim-plantationのいずれかを行う.この場合のTUPは尿ドレナージを良好にするとともに術後のVURを発生させないように注意深く行う.ⅴ)上腎機能を認め,高度VURを合併する場合:TUP,尿管瘤切除術+common sheath reimplanta-tion,膀胱外アプローチによる尿管尿管吻合および尿管瘤切除術+尿管膀胱吻合術の選択肢がある.TUPはiiと同様の目的になる.ⅵ)上腎機能を認め,軽度VURを合併する場合: 高度VURを合併する場合と同様の選択肢に加え,VURが問題にならないあるいは自然消失すると考えて,上腹部アプローチによる尿管尿管(腎盂)吻合術も選択肢となる.3)予防的抗菌薬予防的抗菌薬に関しては,6か月から1歳まで投与する 4),トイレトレーニングが終了するまで投与する,VURを有する場合は5歳まで投与するなどの意見があるが,尿管瘤に対する予防的抗菌薬投与の有用性は定かではない.4)手術法経尿道的尿管瘤穿刺(切開)術(TUP)(図7)TUPにはBugbee,hot knife,cold knife,Ho: YAGレーザー(Holminum: Yttrium-Alminum-Garnetレーザー)などが用いられる.TUP術後の再TUP,尿管瘤切除術+common sheath reimplantationなどの追加手術率は,膀胱内尿管瘤よりも異所性尿管瘤に,単一腎盂尿管に伴う尿管瘤よりも重複腎盂尿管に伴う尿管瘤に,術前にVURを伴わない尿管瘤よりもVURを伴う尿管瘤に高いことがメタ解析により報告されている.閉塞解除率は,1回のTUPで67~92%,2回のTUPで93%とされる.術前にVURの合併がない症例における穿刺後のVURの出現は,単一腎盂尿管に伴う膀胱内尿管瘤では25%,異所性尿管瘤では57%,また,重複腎盂尿管に伴う尿管瘤では40%である.レーザー穿刺が従来のhot incisionよりも術後のVURの発生が少ないとされる 5).術後の尿路感染症は25~48%の症例にみられる.尿管瘤切除術およびcommon sheath reim-plantation下腹部横切開による尿管瘤切除術およびcom-mon sheath reimplantationでは良好な手術成績が得られるが,約5~13%にVURが残存する.尿管瘤を切除後に膀胱後壁の筋層を補強する従来の手術法と尿管瘤のmarsupializationのみを行う簡便な手術法(図8)を比較した報告では,VURの残存,膀胱憩室,再発性尿路感染症,尿禁制,排尿障害という点で両者に有意差がみられなかった 6).腎が無機能でも侵襲があるtotal reconstructionを避けるため,common sheath reimplantationを行い,良好ab図7経尿道的尿管瘤穿刺(切開)術a.膀胱内尿管瘤 b.異所性(膀胱外)尿管瘤レーザー左尿管口左尿管口膀胱内の穿刺遠位端を切開尿管瘤右尿管口右尿管口ab穿刺する数は尿の流出,ファイバー径などから判断する.

元のページ  ../index.html#11

このブックを見る