2422小児泌尿器科学
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114Ⅲ 小児泌尿器科学各論概要1先天性の腎盂尿管移行部通過障害(ureteropelvic junction obstruction: UPJO)は,スクリーニングの超音波検査が普及したことで軽度の症例が多く発見されるようになった.また,先天性UPJOは多くの症例が自然軽快する一方で,治療介入を必要とする症例も存在する疾患である.さらに,症例によっては診察するたびに状態の変化が起こることがあり,臨機応変な対応を求められる場合もある.本項では,このようなUPJOの疾患特性を理解したうえで,適切な診断を行うために必要な検査を提示する.まずは問診や理学所見により無症候性か症候性かを診断する.無症候性であれば,超音波検査でSFU(Society for Fetal Urology)分類 1)を用い,水腎症の程度(grade)を診断する.このgradeによってその後の診療アルゴリズムが変わるため,超音波検査は基本的かつ最も重要な画像検査といえる.超音波検査でgradeが高いと診断した症例には核医学検査を施行し,分腎機能と閉塞の程度を確認する.CTやMRIは周辺臓器との関係を明らかにすることが可能であるため,より正確な診断と術式の決定に有用である.このように先天性UPJOの診断には超音波検査などによる「形態」,核医学検査による「分腎機能」と「閉塞」の状態の3点を評価することが重要である.日本小児泌尿器科学会が作成した「小児先天性水腎症(腎盂尿管移行部通過障害)診療手引き2016」 2)に記述されている診断に対する有用度を付記する(表1).問診(有用度:★★★)と理学的診断(有用度:★★★)2腹痛,側腹部痛,嘔吐などの消化器症状を示す症例が,症候性UPJOによる症状であるかを鑑別するためには,問診や理学的所見による診断が重要である(表2).小児であるため忘れがちである理学的所見は血圧である.先天性UPJOで高血圧が発症する頻度は5~10%といわれており,UPJOに対する手術治療後に高血圧が改善する報告もある.したがってUPJOの症例では血圧測定が推奨される.なお,小児の血圧の基準値に関しては日本小児腎臓病学会からのマニュアルが参考となる 3).6先天性腎盂尿管移行部通過障害(2)─診断A.腎・上部尿路の先天異常Ⅲ 小児泌尿器科学各論表1先天性腎盂尿管移行部通過障害の診断に有用な検査と有用度診断項目有用度問診★★★理学的診断★★★検体検査a)検尿★★★b)血液検査★★c)尿生化検査★画像検査a)超音波検査★★★b)利尿レノグラフィ★★★c)DMSA腎シンチグラフィ★d)CT★e)MRI★f)排尿時膀胱尿道造影★★g)静脈性腎盂造影★h)逆行性腎盂造影★★★★:標準的と考えられるもの★★:標準に準拠すると考えられるもの★:オプションと考えられるもの [文献2より本文中に記載された項目を抜粋し作成]

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