2422小児泌尿器科学
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1156 先天性腎盂尿管移行部通過障害(2)検査31)検体検査検尿(有用度:★★★)出生前診断された水腎症では,1歳までに19%が尿路感染症を起こすといわれている.また,初発の尿路感染症に対し超音波検査を施行すると5.8%に水腎症を認めるといわれている.胎児期・乳児期の水腎症の大半は先天性UPJOと考えられ,尿路感染症のリスクが高いため,検尿は必須の検査である.間欠的水腎症の半数程度の症例や,腹部の打撲や激しい運動の直後の水腎症の症例では,血尿が出現することがあり,検尿が有用となる.さらに,高度の先天性UPJOの症例では,尿蛋白/尿クレアチニン比により腎障害の有無を評価することが可能であるため,尿蛋白の有無の確認はスクリーニングとなる.血液検査(有用度:★★)腎機能低下が疑われる先天性UPJOの症例では,血液生化学検査である血清クレアチニン値を評価する.小児の血清クレアチニンの基準値は年齢,性別,体格で異なることに留意する.なお,患児の筋肉量が著しく少ない場合は,血清クレアチニン値ではなく血清シスタチンC値を用いて腎機能を評価する.尿生化検査(有用度:★)腎機能低下を早期に発見し,治療介入の判断の一助となる尿生化検査の項目としては,N-acetyl beta-D-glucodaminidase(NAG)やβ2マイクログロブリン(β2-MG)がある.NAGは尿細管障害が軽度の時期から尿中に逸脱し,腎病変の早期発見に有用である.先天性UPJOでは,尿路感染症を起こすと尿中NAGの上昇を認める.β2-MGは,95%以上が近位尿細管から再吸収・異化され,尿中排泄は極少量であるため,尿中β2-MGの上昇は近位尿細管障害を示唆する.手術治療の必要な症例では尿中β2-MGが上昇するといわれている.2)画像検査超音波検査(有用度:★★★)超音波検査は非侵襲的かつ簡便に水腎症を評価できるため,先天性UPJOの診断における最も基本的かつ重要な検査法である.かつての超音波検査による水腎症の分類は,軽度,中等度,高度といった記述法であり,主観に左右されやすいものであった.1993年に提唱されたSFU分類 1)は「腎盂拡張の程度」,「腎杯の形態」,「実質の厚さ」により水腎症をgrade 0~4の5段階で評価したものであり,これにより客観的な評価が可能となった(図1).SFU分類は,計測したり複雑な所見を評価したりする必要がなく理解しやすいこと,同一検者では再現性が良好であること,シンプルな分類であるが臨床経過との相関が良好であることから有用性が認知され,標準指標として広く用いられている.一方,腎盂拡張の程度を数値としてより定量的に評価する指標として,腎盂前後径(anterior-pos-terior renal pelvic diameter: APDまたはAPRPD)がある.出生前の胎児超音波検査においてはAPDの計測手技(図2a)や基準値がほぼ確立されており,妊娠週数によりカットオフ値が設定されている.頻用される基準においては,妊娠中期(14~27週)ではAPD 4mm以上を,妊娠後期(28週~)ではAPD 7mm以上を水腎症と診断し,さらに,妊娠後期においてAPD 7~9mmを軽度,9~15mmを中等度,15mmを超えるものを高度と位置付けている 4).とくにAPDが高度の症例では出生後の手abca表2問診,理学的所見で確認すべき項目家族歴 遺伝性疾患,染色体異常,水腎症を含めた泌尿生殖器疾患の有無既往歴 尿路感染症の有無症状 (無症候性) 診断された時期(在胎週数を含めて) (症候性) 腹痛(患側),嘔吐などの消化器症状,発熱,肉眼的血尿の有無 症状が生じた状況(多量飲水の有無など),発症の回数と時期排尿状態 排尿回数,尿意の有無,尿失禁またはドライタイムの有無理学的所見 腹部腫瘤の有無,腹部の圧痛や腰背部の叩打痛の有無 身長,体重,血圧

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