160Ⅲ 小児泌尿器科学各論定義・概念1尿管瘤(ureterocele)は尿管の末端が嚢胞状に拡張したもので,膀胱,尿道あるいは膀胱から尿道にかけて認められる.病因・病態・疫学・分類21)病因発生原因はいまだに解明されていないが,尿管芽と中腎管の間に存在するChwallaʼs membraneの遺残,尿管末端の筋層形成異常,中腎管の異常拡張,尿管の発達不良(尿管芽の膀胱への開口遅延)が原因とする説がある.2)病態尿管瘤では尿が腎盂尿管に停滞するので,様々な程度の水腎水尿管症を呈する.高度な水腎水尿管症を伴う尿管瘤は,胎児期の超音波検査で発見される.また,症状として尿路感染症,腹痛,尿管瘤による排尿障害,尿失禁などがある.女児では尿管瘤が外陰部へ脱出し,外陰部腫瘤として認められることもある.なお,膀胱機能障害による尿失禁が持続することがある.3)疫学尿管瘤は小児の剖検例では0.2%に認められ,また,乳児の高度水腎症の14%を占める.女児は男児よりも3~7倍多い.左側が約60%と右側よりも多く,5~22%は両側性である.4)分類単一腎盂尿管(single system)に伴う尿管瘤と重複腎盂尿管(duplex system)に伴う尿管瘤があり,また,尿管瘤が膀胱内に存在する膀胱内(intraves-ical)尿管瘤と,膀胱頸部を越えて尿道に存在する異所性(ectopic)尿管瘤(あるいは膀胱外(extravesi-cal)尿管瘤)に分類される.膀胱内尿管瘤は単一腎盂尿管に多い.尿管瘤の約80%は重複腎盂尿管の上腎由来であり,尿管瘤の60~80%は異所性尿管瘤である.単一腎盂尿管に伴う尿管瘤の約30%は多嚢胞性異形成腎(multicystic dysplastic kidney: MCDK)であり,重複腎盂尿管に伴う尿管瘤の上腎は64%が組織学的に異形成である.診断3尿管瘤の大きさ・位置,水腎水尿管の程度,膀胱尿管逆流(vesicoureteral reflux: VUR)の有無,腎機能などを確実に診断することが重要である.鑑別すべき疾患に,異所性尿管が尿管瘤のように見えるpseudo-ureteroceleがある.pseudo-ureteroceleの壁は尿管瘤よりも厚い(>2mm)とされる 1).1)超音波検査尿管瘤の大きさ・位置および水腎水尿管症の程度などを診断するために有用な検査である(図1).術前の評価だけでなく,術後においても超音波検査が画像診断の中心となる.2)排尿時膀胱尿道造影排尿時の尿管瘤による尿道閉塞の有無,VURの合併などを確認するために必須の検査である(図2).重複腎盂尿管に伴う尿管瘤では同側の下腎の約60~70%,対側腎の20~40% にVURの合併を認める.3)核医学検査(腎シンチグラフィまたはレノグラフィ)腎機能を客観的に評価できるので,腎を温存す18尿管瘤A.腎・上部尿路の先天異常Ⅲ 小児泌尿器科学各論
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