2431川崎病診断の手引きガイドブック2020
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2 「川崎病診断の手引き」は,2002年に改訂5版が作成され,発熱の定義を「5日以上続く発熱(ただし,治療により5日未満で解熱した場合も含む)」とした点と,「備考」の最後に,容疑例(現在の「不全型川崎病」)の存在とそれらに冠動脈病変が合併しうることを新しく明記した点がおもな変更箇所であった. 改訂5版発行後,全国的に早期治療の増加と冠動脈病変合併率の低下を認め,その点に改訂は貢献した.一方で「約10%存在する」とされた不全型川崎病は増加を示し,最近では全患者の20%以上を占めるようになった. 同時に冠動脈病変の明確な評価方法として,日本人小児の冠動脈内径の標準値が確立され,Zスコアによる病変の判定が可能になった.それらの状況下で,より正確な不全型川崎病の診断方法が必要と考えられてきた.また改訂5版では,参考条項に変更を加えなかったため,改訂4版の記述が30年以上続き,現状に適した内容に見直す必要があった. そこで,2017年に「川崎病診断の手引き」改訂について,日本川崎病学会運営委員会に諮り,約75%の委員から同意がえられ,日本川崎病研究センターと厚生労働科学研究 難治性血管炎に関する調査研究班からも同意をえた. 改訂にあたり,2018~2019年に改訂委員会を重ね,原案を第38回日本川崎病学会総会・学術集会に提示して意見を求め,再度検討して改訂6版最終案を作成した.事前の予想以上に多くの部分が改訂されたが,第122回日本小児科学会学術集会に発表し,2019年4月の日本川崎病学会運営委員会および同5月の日本川崎病研究センター理事会で承認された.今後は全国調査も含めて,この改訂6版を使用すると同時に検証を行う必要がある. 以下におもな変更点と解説を記す.なお,診断名の定義についてはp.10を参照されたい.1.主要症状(表1) 6つの主要症状は臨床医に十分に認識されており,基本的に大きな変更はしない方針としたが,以下のような点を臨床現場の要求に合わせて改訂した. 主要症状の「発熱」に関して,「5日以上続く」と「(ただし,治療により5日未満で解熱した場合も含む)」を削除し,発熱の日数は問わないことになった.現在の治療は90%以上の患者で大量単回投与が行われ,治療開始は約10%が第3病日以前,約35%は第4病日以前に免疫グロブリン静注(intravenous immunoglobulin:IVIG)療法を開始しており,日数が5日未満で発熱の項目を満たさないという判断は現状に合わないと判断した. 従来「不定形発疹」とされていた皮膚症状に,「(BCG接種痕の発赤を含む)」を記載したため,全体の表記は「発疹」とした.これまで,本疾患の好発年齢とはいえBCG接種後約1年までの年齢層にしかみられないこと,アメリカの予防接種では行われていないことなどで,参考条項に留めてあった.しかし,以前から小児科医の多くが,BCG接種痕の発赤は本疾患の初診時に特徴的な症状であり主要症状に入れるべきと考え,改訂5版では川崎病全国調査の印刷物にBCG接種痕の変化の写真を載せてその存在を強調していた.今回の検討で,川崎病の診療機会はアジア諸国で急激に増加しており,その多作成の目的と経緯おもな変更点診断の手引き改訂6版  作成の目的,経緯と変更点I 診断の手引き改訂の背景1

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