11 第24回川崎病全国調査1)(2015~2016年発症対象者)に占める割合は,定型例77.8%,不定型例1.6%,不全型は20.6%だった.不全型川崎病の割合は第21回川崎病全国調査2009~2010年発症対象者1)では18.6%であり,その後は少しずつ増加傾向にある.第24回川崎病全国調査における年齢別の不全型川崎病の割合は,6か月未満においては25.5%,6~12か月未満で28.1%であり,低年齢で割合が高かった.また,9歳の28.8%,10歳以上の28.0%が不全型川崎病であり高年齢でも割合が高かった.不全型川崎病の主要症状は4つもしくは3つの例が93.8%であった. 「川崎病診断の手引き改訂6版」の定義によって今後それらの頻度がどのように変化するか検証する必要があると思われる. 第24回川崎病全国調査1)における不全型川崎病の冠動脈後遺症の頻度は巨大瘤が0.08%,瘤0.55%,拡大1.20%であり,定型例とほとんど同程度であった.Sonobeら2)は第17回川崎病全国調査(2001~2002年発症対象者)のデータをもとにした解析を行い,川崎病主要症状が4つ以下の例の頻度は16.1%であり,それらの急性期の冠動脈病変は18.4%と5つ以上例の14.2%より多かったことを報告した.1つや2つの例においても冠動脈病変をそれぞれ25.0%と23.2%に認めたことは特筆すべきことである.以上のように不全型川崎病は軽症の川崎病ではなく,主要症状が少ない例でも冠動脈病変をきたすという認識が必要であり,タイミングを失することなく適切に診断することが重要である. 発熱の原因が不明の小児において,川崎病の可能性を検討することは重要で,主要症状を確認する必要がある.ただし,主要症状が少ない例や各症状が軽微である場合があり,診断に苦慮することも少なくない.川崎病を検討する際の心臓超音波検査の情報は重要であり,躊躇なく心臓超音波検査を行うことが必要である.心臓超音波検査は1回だけでは不十分であり,繰り返して行い経過をみることも重要である.また,改訂5版までの参考条項のうち,下記の所見は特に川崎病に特徴的な所見であり,確認されれば診断の一助となる.まず,BCG接種部の発赤は,改訂6版では主要症状として扱うことになり,さらに参考条項のなかで,血清トランスアミナーゼ値の上昇,乳児の尿中白血球増加,回復期の血小板増多,胆囊腫大,低アルブミン血症・低ナトリウム血症などが,主要症状が4つ以下でも川崎病を疑わせる所見としてまとめられた.さらにAHA state-ment 20173)では不全型川崎病が疑われる場合の対応に関するアルゴリズムを示している.アルゴリズムでは,小児で5日を超える発熱が持続し(乳児では7日)川崎病の主要症状(発熱を除く)を2項目か3項目認める場合で,川崎病以外に発熱の原因が考えられない場合を想定している.CRP値が3.0 mg/dL以上,もしくは赤沈値が40 mm/h以上である場合には,表13)の特徴的な臨床検査所見や心臓超音波所見について検討する.表1A3)の6項目の臨床検査所見の3項目以上を認める場合や,表1B3)の3項目の不全型川崎病疫学冠動脈病変不全型川崎病の診断特殊な病型における診断上の注意点II 診断名の定義と特殊な病型における診断上の注意点2
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