2436Fontan循環
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3第1章Fontan循環の基礎APC法 右心房を直接肺動脈に吻合する.右心房壁は肥厚し,心房容積は拡大,心房筋は次第に線維化して心房不整脈の基質となる.同時に,血流うっ滞から血栓形成を起こしやすくなる.さらに,心房収縮由来の圧上昇から血液は上下大静脈へ逆流し肺循環には流体力学的に不利益である.時に右心房と機能的左心房との隔壁を心膜や人工物で形成する場合もある.この場合には従来の典型的なAPC法より右心房の拡大の程度が小さいが,基本的にはAPC法の不都合を多くあわせもつ.Bjerk手術 右室の収縮を利用し前方性の血流増加を期待した術式である.しかし,低形成の右室のコンプライアンスは低下し,かつ,三尖弁も形態や機能が異常であることが多い.したがって,多くの場合,心房収縮に加えて心室収縮による血液は右心房,上下大静脈へ逆流する割合が多く肺循環への前方血流は増えない.さらに右室流出路に再建を加えた場合には将来の心室不整脈の温床になる可能性がある.これらの背景からone and half手術(Glenn手術と低形成右室を使用した手術)を含め,このBjerk手術後の患者はAPC術後患者と同様に,将来的にTCPC型のFontan循環へ転換する場合も多い3).TCPC(lateral tunnel法,IAR) この術式はAPC法の心房の拡大の不利益を解消し,かつ,Fontanルートの加齢に伴う成長を期待した術式である.通常,心房内のFontanルートの作成に自己心房壁を使用した場合,心膜や人工物によるFontanルートの機能的左心房の完全な隔離は困難で右左短絡を残すことが少なくない.時に,運動時チアノーゼや脳血栓などのリスクとなることがある.TCPC(intra-atrial grafting法,IAR) Fontanルートの加齢に伴う成長は期待できないが,Fontanルートが完全に心膜や人工物であるため運動時チアノーゼや脳血栓などのリスクは少ないかもしれない.Fontanルート壁への血栓付着や石灰化の進行からFontanルート内腔の狭窄が進行する場合がある.心外導管法 不整脈の原因である心房筋創部の回避や時にoff-12345pump法による周術期の心筋保護を可能としたFontan循環作製法である.Fontanルート作成時の吻合部からの右左短絡はないが,IAR法と同様にFontanルート壁への血栓付着や石灰化の進行からFontanルート内腔の狭窄が進行する場合がある.また,加齢に伴う成長は期待できないが,Fontanルート内の血流はスムースであり流体力学的に有利である.intra-atrial grafting法と同様であるが,最近のFontan手術が低年齢化し長期的に太い導管作成は上下大静脈のサイズとのミスマッチを起こしFontan血流をうっ滞させる可能性がある.また,小児早期でのECRでは遠隔期でのグラフトのサイズが相対的に狭窄となることが懸念される.肝静脈血流への配慮 上大静脈と下大静脈から導管を用いた血流の吻合部は肺動静脈瘻発症を避けるため肝静脈血流が左右肺動脈へ均等に分布するように配慮することが必要となる.特に左側相同心の場合には肝静脈から肺動脈への血流は少なく血流が不均等になり片側への肝血流が極端に減る場合がある.開窓術(fenestration) Fontan周術期の円滑なFontan循環への適応を助けるため,Fontanルートに4~6 mm程度の穴を開け,Fontanルート内の静脈血を機能的左心房内へ還流させる場合がある.このことで中心静脈圧を下げ,同時に体心室の前負荷を確保することで多臓器のうっ血が改善しFontan循環が安定しやすい.しかし,静脈血が体循環に流入するため動脈酸素飽和度が低下する.施設によりその適応基準は一定しないが,ルーチンとしてすべてのFontan手術に施行する場合,Fontan手術適応でリスク因子が多い場合にのみ施行する場合がある.国立循環器病研究センターではリスク因子の多い患者でfenestrationを作成している.生理正常循環 正常では肺静脈から動脈血が左心房に還流され動脈血(前負荷)は僧帽弁を通り左心室に流入する.十分な前負荷によって左心室から大動脈へ動脈血が駆出され,多臓器灌流に十分な心拍出量と灌流圧(体671

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